日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
原著
嚥下障害者のQOL評価:包括的QOL調査票 (SF-36) の適用と疾患特異的QOL調査票 (SWAL-QOL・SWAL-CARE) の試用についての比較検討
和田 満美子星野 由香奥平 奈保子金井 日菜子峯下 圭子楠元 恵一藤谷 順子
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2003 年 7 巻 2 号 p. 109-116

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抄録

嚥下障害の治療では,患者の主観的評価やQOLも重要である.しかし,日本ではそのような研究は充分ではない.そこで我々は,包括的調査票と疾患特異的調査票について,それぞれの有用性を検討するために,SF-36日本語版ver.1.2とSWAL-QOL・SWAL-CAREの日本語訳を実施したので報告する.在宅嚥下障害者を対象に両調査票を郵送方式で実施した.分析対象の23名の内訳は,男性18名・女性5名で,平均年齢は58.7歳.原因疾患は脳血管障害17名,脳腫瘍3名,頭部外傷2名,低酸素脳症1名.SF-36の8つの各下位尺度におけるCronbachのα係数は0.59~0.72であり,一定の内的一貫性が示された.SF-36の結果では,「体の痛み」を除く7つの下位尺度で国民標準と比べて有意なQOLの低下がみられ,各種疾患群との比較では,脳卒中群の結果と近いプロフィールを示していた.SWAL-QOL・SWAL-CAREについては,どの下位尺度の得点も広く分布していた.また,各下位尺度のCronbachのα係数は0.86~0.90であり,高い内的一貫性が示された.さらに,SF-36との同一質問への回答および欠損値率の比較でも有意差は認められず,SF-36と同程度に答えやすい調査票であることが示された.弁別的妥当性については,SF-36との各下位尺度の得点同士の相関係数は高くはなかった (SWAL-QOLでの平均値は0.26,SWAL-CAREでの平均値は0.25).収束的妥当性については,SF-36と共通した下位尺度の得点同士の相関係数で一定の値が得られた (心の健康0.50,p>0.5).以上より,SF-36は嚥下障害者にも適用できる可能性が示された.また,SWAL-QOL・SWAL-CAREの日本語訳は一定レベルの実施妥当性が得られ,調査票として活用できる可能性が示された.今後も調査の拡大を検討したい.

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© 2003 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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