日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
7 巻, 2 号
日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
原著
  • 和田 満美子, 星野 由香, 奥平 奈保子, 金井 日菜子, 峯下 圭子, 楠元 恵一, 藤谷 順子
    2003 年7 巻2 号 p. 109-116
    発行日: 2003/12/30
    公開日: 2020/08/21
    ジャーナル フリー

    嚥下障害の治療では,患者の主観的評価やQOLも重要である.しかし,日本ではそのような研究は充分ではない.そこで我々は,包括的調査票と疾患特異的調査票について,それぞれの有用性を検討するために,SF-36日本語版ver.1.2とSWAL-QOL・SWAL-CAREの日本語訳を実施したので報告する.在宅嚥下障害者を対象に両調査票を郵送方式で実施した.分析対象の23名の内訳は,男性18名・女性5名で,平均年齢は58.7歳.原因疾患は脳血管障害17名,脳腫瘍3名,頭部外傷2名,低酸素脳症1名.SF-36の8つの各下位尺度におけるCronbachのα係数は0.59~0.72であり,一定の内的一貫性が示された.SF-36の結果では,「体の痛み」を除く7つの下位尺度で国民標準と比べて有意なQOLの低下がみられ,各種疾患群との比較では,脳卒中群の結果と近いプロフィールを示していた.SWAL-QOL・SWAL-CAREについては,どの下位尺度の得点も広く分布していた.また,各下位尺度のCronbachのα係数は0.86~0.90であり,高い内的一貫性が示された.さらに,SF-36との同一質問への回答および欠損値率の比較でも有意差は認められず,SF-36と同程度に答えやすい調査票であることが示された.弁別的妥当性については,SF-36との各下位尺度の得点同士の相関係数は高くはなかった (SWAL-QOLでの平均値は0.26,SWAL-CAREでの平均値は0.25).収束的妥当性については,SF-36と共通した下位尺度の得点同士の相関係数で一定の値が得られた (心の健康0.50,p>0.5).以上より,SF-36は嚥下障害者にも適用できる可能性が示された.また,SWAL-QOL・SWAL-CAREの日本語訳は一定レベルの実施妥当性が得られ,調査票として活用できる可能性が示された.今後も調査の拡大を検討したい.

  • 稲本 陽子, 保田 祥代, 小口 和代, 才藤 栄一
    2003 年7 巻2 号 p. 117-125
    発行日: 2003/12/30
    公開日: 2020/08/21
    ジャーナル フリー

    【目的】急性期病院における脳血管障害による摂食・嚥下障害患者のSTによる嚥下訓練前後の重症度について,訓練介入のポイントを明らかにする目的で調査した.【対象・方法】平成13年4月1日から平成14年3月31日にSTに嚥下訓練処方のあった入院患者122名のうち,脳梗塞,脳出血発症で入院した66名を対象とした.訓練開始時から訓練終了時までの臨床的病態重症度(Dysphagia Severity Scale 以下DSS)と摂食状態を調査した.訓練開始時と訓練終了時のDSSの変化を,予備的に終了時DSS―開始時DSS(以下⊿DSS)で算出し分析した.【結果】訓練開始時,対象者のDSS構成は,機会誤嚥以下の誤嚥のあるレベルが73%であり,摂食状態は,絶食が45%を占めた.訓練前後の比較が可能であった群46名で,平均⊿DSSは1.5(最小値0~最大値5)であった.DSS改善は29名 (63%),DSS不変は17名 (37%),DSS悪化は0名 (0%) であった.DSS改善の29名の平均⊿DSSは2.4であった.訓練開始時,誤嚥のあるレベル37名のDSS別の平均⊿DSSは,唾液誤嚥からが1.3,食物誤嚥からが2.0,水分誤嚥からが2.3,機会誤嚥からが1.3であった.年齢・性別・初再発別の⊿DSSは,いずれの群間も統計学的有意差はなかった.【考察】訓練開始時,リスクの高い症例が多数を占め,リスク管理や訓練介入の最適時期を適切に判断していくことが重要である.訓練開始時DSSが唾液誤嚥の帰結は不良,食物誤嚥,水分誤嚥となるにつれ良好であり,訓練開始時DSSが唾液誤嚥例に対しては特に厳重なリスク管理が必要である.チームアプローチによる長期的な介入および経過観察の必要性が再確認された.

  • 松田 明子
    2003 年7 巻2 号 p. 126-133
    発行日: 2003/12/30
    公開日: 2020/08/21
    ジャーナル フリー

    【在宅における摂食・嚥下障害者の主介護者に対して摂食・嚥下リハビリテーション教育を実施した結果,摂食・嚥下障害者の摂食・嚥下機能の維持および改善をもたらすかどうかについて検討を加えた.対象者は,インフォームド・コンセントが得られた27名の摂食・嚥下障害者の主介護者とした.この対象者を無作為に教育群14名,観察群13名に割り付けた.教育は研究者によって実施し,教育群に摂食・嚥下障害の介護方法を4ヶ月間教育し,観察群は観察のみとした.評価項目は摂食・嚥下障害者に摂食・嚥下障害の症状,ADL:Barthel Index,SpO2を調査し,主介護者には摂食・嚥下障害の知識を調査した.面接調査は,訪問看護師によって実施した.その結果,教育群は教育前に比べて教育後に摂食・嚥下障害者のSpO2の有意な改善が得られた.したがって,訪問看護師が,摂食・嚥下障害者の主介護者に対して摂食・嚥下リハビリテーションを目的とした介護方法を検討し,教育していくことが重要であると考える.

  • ―超音波前額断撮影法による検討―
    田村 文誉, 鈴木 司郎, 向井 美惠
    2003 年7 巻2 号 p. 134-142
    発行日: 2003/12/30
    公開日: 2020/08/21
    ジャーナル フリー

    【目的】要介護状態の摂食・嚥下障害者に対し,摂食・嚥下運動を容易にするための補綴装置の作製や設計をする場合には,垂直的顎位の決定に困難を要する場合が多い.そこで,無歯顎者において補綴装置によって与えられた垂直的顎位の変化が嚥下時舌運動に及ぼす影響を明らかにし,摂食・嚥下障害者に対する補綴装置の垂直的顎位決定の指標を得ることを目的として検討を行った.

    【対象と方法】対象は全身疾患のない無歯顎者9名(男性6名女性3名,平均年齢57.4歳)である.各対象者に実験用Swalloaidを作製し,「臼歯部が上下顎義歯を装着した際の咬合高径と同じ高さ(以下,Normal:Nとする)」「上顎装置装着時(以下,Reduced:Rとする)」「装置未装着時(以下,None:Noとする)」の各垂直的顎位において,37℃に保温した5mlの水を嚥下する際の嚥下時舌運動動態を,超音波診断装置(東芝社製SSA-320A)を用いて測定した.嚥下回数は,各設定につき5回以上解析可能な波形が得られるまで行った.測定時の体位は,歯科用ユニット上で垂直座位(90度)とした.なお,統計処理の検定にはONE WAY-ANOVA及びFisher's F-testを用いた.

    【結果】対象者全員の嚥下時の陥凹深度の平均値は,NとRに陥凹深度の差はみられなかったが,Nと比較してNoでは有意に増加していた (p<0.05).

    【考察】無歯顎の被験者が装置を用いずに舌が固定源のない状態においては,舌を大きく動かすことによって嚥下のための代償作業を行っていることが推察された.また「上顎のみ装着」であっても垂直的顎位の保たれることにより嚥下動作の補助になるものと考えられた.

  • 吉田 剛, 内山 靖, 熊谷 真由子
    2003 年7 巻2 号 p. 143-150
    発行日: 2003/12/30
    公開日: 2020/08/21
    ジャーナル フリー

    目的:嚥下時の喉頭運動が片麻痺や異常姿勢による頸部周囲筋の筋緊張異常により二次的にも阻害されうることに注目し,喉頭位置と喉頭挙上筋の筋力に関する臨床的指標を開発した.本研究の目的はこれらの指標の信頼性を検証し,臨床導入の可能性を模索するために,健常人の加齢・性差による影響を含めた基礎資料の獲得と,慢性期脳血管障害 (CVD) 患者との比較から開発した指標の臨床的有用性を明らかにすることである.

     方法:対象は健常者,高齢者,CVD患者の109名であった.そのうち,検者内および検者間信頼性の検証は,嚥下障害のあるCVD患者10名を対象とし,加齢変化と性差の影響の検証は,健常若年者群30名と,高齢者群17名,CVDの有無については,高齢者群17名と慢性期CVD嚥下障害なし群20名,嚥下障害の有無については,慢性期CVD嚥下障害なし群20名とあり群32名を対象として各2群間を比較した.測定項目は,相対的喉頭位置を求める指標として,頸部最大伸展位でオトガイから甲状軟骨上端間距離GT,甲状軟骨上端から胸骨上端間距離TS,この2つの指標からGT/(GT+TS)を算出することによる相対的喉頭位置 (以下,喉頭位置) とし,喉頭挙上筋の筋力は頭部最大屈曲位での保持能力を頭部落下程度で4段階に分けるGSグレードとした.

     結果および考察:検者内信頼性ICC (1,1) は,GT=0.943,TS=0.837,GSグレードは100%の一致率であった.検者間信頼性ICC (2,1) は,GT=0.905,TS=0.926,GSグレード=0.943であり,測定の信頼性は高かった.健常若年者群では,GT=6.4±0.9cm,TS=12.2±1.0cm,喉頭位置=0.34±0.04,高齢者群では,GT=6.6±1.0cm,TS=9.5±1.1cm,喉頭位置=0.41±0.05であった.以上より,加齢によりTSが短縮することで喉頭位置が下降することが明らかとなった.性差については健常若年者群でGTのみ有意差がみられた.また,CVDの有無による有意差はみられなかったが,嚥下障害の有無では,慢性期CVDにおいてTS,喉頭位置,GSグレードに有意差が認められ,本指標の臨床的有用性が示唆された.

臨床報告
  • ―特に徒手的治療手技を試みた脳障害の2症例―
    森 憲一, 千葉 一雄, 太田 清人, 増井 健二, 梅木 速水, 浮田 紫乃, 権藤 要
    2003 年7 巻2 号 p. 151-158
    発行日: 2003/12/30
    公開日: 2020/08/21
    ジャーナル フリー

    [目的]脳障害により摂食・嚥下障害を呈した2症例に対し徒手的治療手技を試み,治療効果とその持続性について考察した.[症例1]79歳男性.発症後6ヶ月間,経鼻経管と気管カニューレを留置された脳梗塞右片麻痺.BDM法にて気管内色素混入を認めた.頸部・体幹(特に舌骨上筋群)に着目した徒手的治療手技を施行.5週後にはBDM法にて気管内色素混入を認めず,気管カニューレ抜管,経口摂取可能となった.[症例2]64歳女性.全身的に過緊張が顕著な四肢麻痺.正常圧水頭症によりシャント術施行後,1年8ヶ月経過し,食事摂取量が約6割であった.食事場面において出現する頸部・顔面の過緊張が咀嚼・嚥下運動を阻害する因子であると考え,姿勢緊張の調整,頸部・顔面筋の過緊張軽減と短縮筋の伸張を中心に治療を試みた.治療直後の過緊張軽減と食事摂取量増加は見られたが,治療日以外の増加は得られず,安定しなかった.ケアに関わるスタッフに知識・技術の伝達と情報交換を行い,福祉用具の変更とポジショニングの徹底を促したところ,約9割の安定した摂取量が得られた.[臨床的検討]咀嚼・嚥下運動を阻害する筋の硬さを,生理学的な筋収縮と病態生理学的な短縮に区別し,対象部位の位置関係と形態的特徴に基づいた徒手的治療手技を選択することが有効であった.また,嚥下運動には舌骨上筋群が姿勢保持に働かず,嚥下運動に重点的に働くような姿勢選択が嚥下には有利に働いたと考えられる.治療効果の持続には,身体が適応できるような福祉用具の選択とポジショニングが必要であった.[結論]解剖・生理学的な特徴に応じ選択した治療を展開し,即時的な効果が得られた.しかし,効果を持続させるには即時的な治療効果のみにとらわれず,チームスタッフが嚥下運動のメカニズムを理解し,姿勢の運動学的解釈と環境適応という視点をもって,共通の方法で接することが必要であると考えられる.

  • 山崎 裕, 鄭 漢忠, 牧野 修治郎, 北田 秀昭, 上野 尚雄, 守屋 信吾, 野谷 健一
    2003 年7 巻2 号 p. 159-165
    発行日: 2003/12/30
    公開日: 2020/08/21
    ジャーナル フリー

    患者は54歳の女性で,舌扁平上皮癌(T4N1)に対し術前動注と照射の同時併用療法後に,根治手術として舌亜全摘術,両側頚部郭清術,遊離腹直筋皮弁による口腔再建術が施行された.広範な切除範囲のため術中,嚥下機能改善手術として喉頭挙上術と輪状咽頭筋切断術を行った.術後のVF所見で軽度の口唇閉鎖不全と,咽頭への送り込み障害を認めたが,誤嚥は認められず,食道入口部の良好な開大が確認された.その後,種々の間接ならびに直接訓練を行い,退院前には全量経口摂取が可能になった.しかし,術後の経過中に問題点も生じた.過度の喉頭挙上により呼吸困難が生じ,気管カニューレの抜去が遅延したことと,腹直筋皮弁容量の著明な減少である.一般に移植皮弁の脂肪組織は萎縮しにくく容量の維持に都合が良いとされているが,本症例は脂肪組織も体重の大きな変動により増減することが示された.

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