日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
原著
脳血管障害による摂食・嚥下障害患者の分析嚥下訓練前後の変化
稲本 陽子保田 祥代小口 和代才藤 栄一
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2003 年 7 巻 2 号 p. 117-125

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抄録

【目的】急性期病院における脳血管障害による摂食・嚥下障害患者のSTによる嚥下訓練前後の重症度について,訓練介入のポイントを明らかにする目的で調査した.【対象・方法】平成13年4月1日から平成14年3月31日にSTに嚥下訓練処方のあった入院患者122名のうち,脳梗塞,脳出血発症で入院した66名を対象とした.訓練開始時から訓練終了時までの臨床的病態重症度(Dysphagia Severity Scale 以下DSS)と摂食状態を調査した.訓練開始時と訓練終了時のDSSの変化を,予備的に終了時DSS―開始時DSS(以下⊿DSS)で算出し分析した.【結果】訓練開始時,対象者のDSS構成は,機会誤嚥以下の誤嚥のあるレベルが73%であり,摂食状態は,絶食が45%を占めた.訓練前後の比較が可能であった群46名で,平均⊿DSSは1.5(最小値0~最大値5)であった.DSS改善は29名 (63%),DSS不変は17名 (37%),DSS悪化は0名 (0%) であった.DSS改善の29名の平均⊿DSSは2.4であった.訓練開始時,誤嚥のあるレベル37名のDSS別の平均⊿DSSは,唾液誤嚥からが1.3,食物誤嚥からが2.0,水分誤嚥からが2.3,機会誤嚥からが1.3であった.年齢・性別・初再発別の⊿DSSは,いずれの群間も統計学的有意差はなかった.【考察】訓練開始時,リスクの高い症例が多数を占め,リスク管理や訓練介入の最適時期を適切に判断していくことが重要である.訓練開始時DSSが唾液誤嚥の帰結は不良,食物誤嚥,水分誤嚥となるにつれ良好であり,訓練開始時DSSが唾液誤嚥例に対しては特に厳重なリスク管理が必要である.チームアプローチによる長期的な介入および経過観察の必要性が再確認された.

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© 2003 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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