2003 年 7 巻 2 号 p. 159-165
患者は54歳の女性で,舌扁平上皮癌(T4N1)に対し術前動注と照射の同時併用療法後に,根治手術として舌亜全摘術,両側頚部郭清術,遊離腹直筋皮弁による口腔再建術が施行された.広範な切除範囲のため術中,嚥下機能改善手術として喉頭挙上術と輪状咽頭筋切断術を行った.術後のVF所見で軽度の口唇閉鎖不全と,咽頭への送り込み障害を認めたが,誤嚥は認められず,食道入口部の良好な開大が確認された.その後,種々の間接ならびに直接訓練を行い,退院前には全量経口摂取が可能になった.しかし,術後の経過中に問題点も生じた.過度の喉頭挙上により呼吸困難が生じ,気管カニューレの抜去が遅延したことと,腹直筋皮弁容量の著明な減少である.一般に移植皮弁の脂肪組織は萎縮しにくく容量の維持に都合が良いとされているが,本症例は脂肪組織も体重の大きな変動により増減することが示された.