日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
原著
正常嚥下の検討により考案された「上部食道造影パターン分類」の信頼性
瀬田 拓稲田 晴生安保 雅博杉本 淳宮野 佐年
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2004 年 8 巻 2 号 p. 127-134

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抄録

【目的】「上部食道造影パターン分類」の信頼性を検討することを目的に,造影パターンの再現性を検討した.この分類は,瀬田らが健常成人を対象に嚥下造影を施行,正面像の検討から,食道入口部通過の左右差を反映していると考えられる13種類の分類を考案し,定義したもので,左右梨状窩より流出したバリウムが左右食道側壁に沿って流れるところに着目し,梨状窩通過直下での左右差より左(右)梨状窩のみ通過,左(右)梨状窩優位通過,両側梨状窩通過に大分類する.さらに上部食道内で左右に分かれて流れる造影剤の合流の有無から細分化される.【対象と方法】健常成人52人を対象に,透視下に5mlバリウム嚥下正面像を連続3回施行.3回中2回以上出現したパターンを「初回パターン」とした.一昼夜以上間隔を空けて再度5mlバリウム嚥下正面像を3回施行.2回以上出現したパターンを「再検パターン」とし,「初回パターン」と「再検パターン」を比較した.【結果】全対象者において3回中2回以上同パターンが出現したため,全対象者の「初回パターン」および「再検パターン」が決定できた.「初回パターン」と「再検パターン」が一致した対象者は49人(94%) であった.【考察】食道入口部機能の個体差によって健常人でも上部食道造影パターンの差異が生じるものと考えられたが,同一被験者においては,造影パターンは一定しており,少なくとも短期間には変化しないものと考えられた.造影パターンの決定は,VF正面像3回施行し, 2回以上出現したパターンを採用すれば十分信頼できるものと考えられた.しかし,定性的な分類のため,分類定義の境界付近の再現性は不十分で,分類する際には限界があることに注意する必要がある. 【結論】「上部食道造影パターン分類」は信頼できる分類であることが示唆された.

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© 2004 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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