日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
原著
脳血管障害による摂食・嚥下障害患者の退院後のフォローアップ
稲本 陽子小口 和代保田 祥代才藤 栄一
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2004 年 8 巻 2 号 p. 135-142

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抄録

【目的】急性期病院における脳血管障害による摂食・嚥下障害患者の退院後の摂食状態帰結について調査し嚥下機能の長期的な変化について分析した.

【対象と方法】平成13年4月1日から平成15年3月31日にSTが嚥下訓練を施行した脳血管障害による摂食・嚥下障害患者149名(平均年齢70.2歳)を対象とした.カンファレンスシートとカルテから,対象者の退院時の摂食状態の分布を見た.さらに退院後の追跡として,質問紙調査法を用い,患者本人および家族に対し,調査時の所在,摂食状態について電話による聞き取り調査を施行した.発症から調査までの平均日数は419日,退院から調査までの平均日数は338日であった.

【結果】退院時の摂食状態は,経管のみ33名 (22%),経管経口併用10名 (7%),経口のみ94名 (63%),死亡12名(8%)であった.退院後追跡調査では,生存退院した137名中, 133名 (97%) から有効回答を得た.退院後調査時までに死亡したのは17名であった.調査時に生存し自宅に所在していたのは76名(50%)であり,このうち9割が経口のみであった.経管栄養を必要とする7割が自宅以外の所在であった.全対象者の摂食状態の帰結は,経管のみ20名 (13%),経管経口併用7名 (5%),経口のみ89名 (60%),死亡29名 (19%),不明4名 (3%)であり,常食を経口摂取可能となったのは42%であった.退院時摂食状態と調査時摂食状態の相関係数は0.768であった.

【考察】発症約1年後で半数以上に摂食・嚥下障害が持続した.経口のみ例のうち,約8割が自宅に所在しており,嚥下障害が改善した例は自宅退院になりやすい傾向にあった.退院時の摂食状態で,退院後の摂食状態がある程度予測可能といえた. しかし,退院後に大きく改善する例や低下する例もあった.脳血管障害の摂食・嚥下障害は長期的に介入を要する障害であることが確認でき,退院後も,合併症等のリスク管理,機能評価, QOL,介護負担の視点で定期的なフォロ一体制が必須である.

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© 2004 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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