抄録
日本へのインバウンド・ツーリズムが急成長している中,ゴールデン・ルートと言われる東京~京都への集中が課題として指摘されている。観光地理学では,ある地域で国際観光が発展することによって変更する観光者の流れと観光空間の拡大を検討する研究モデルが1970年代から登場し,国内観光と国際観光の空間利用および観光地の空間的階層を説明しようとしている(Pearce 1995)。ゲートウェイからみた空間的拡大は円方に進むのではなく,交通手段や観光資源の魅力などに影響され,一部の地方都市までに及ぶようになる。このような地方都市は核となり,「SIT(Special interest tourism)」に基づき新たな周辺への拡大過程を生み出す可能性を持つ。そこで本研究は重要なインバウンドクラスターである「広島」を中心とする中国地方を事例とし,インバウンド・ツーリズムの空間的拡大を量的と質的な側面から検討し,その要因を複数の事例から探ることを目的とする。