日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
原著
脳性麻痺児・者の摂食嚥下機能評価
第1報:誤嚥可能性検出票作成の試み
村山 恵子神田 豊子近藤 和泉北住 映二児玉 和夫
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2004 年 8 巻 2 号 p. 143-155

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抄録

【目的】脳性麻痺児・者 (以下CP) では,誤嚥性肺炎の管理が生命予後を規定する.我々は1999年より厚生労働省障害保健福祉総合研究事業の一環として,CPにおける「誤嚥」の簡便な評価を作成してきた.2000年度試行を経て, 252項目から33項目を抽出し,2001年版評価 (ver.2.0)を作成し,多施設で試用した.その統計学的解析結果から,誤嚥の可能性を検出する新たな評価システムを作成した.

【対象】協力8施設でVF適応とされた81例 (男49,女32例.年齢:1~47歳).基礎疾患はCP 61例,CP以外 (脳症後遺症・頭部外傷後遺症など) 20例.

【方法】2001年版評価 (家族アンケート,全身状態把握票,マニュアル.Ver.2.0)を使用した.VFは施設毎の基準に従って実施したが,造影食品の形態を二種類 (液体と,高粘度液体または固体)とし,摂取姿勢も二種類とすることを原則とした.VF上の誤嚥判定は医師二名以上が明らかな誤嚥があると判断したものを「あり」とした.統計学的検討は,誤嚥の有無と誤嚥の種類を別に検討した多変量ロジスティック回帰分析を行った.

【結果】欠損値を除いた75例をVF結果によって3群に分類した.Ⅰ群:誤嚥なし18例,Ⅱ群:液体のみ誤嚥あり20例,Ⅲ群:食物または高粘度の液体も誤嚥あり37例.統計分析の結果,誤嚥の有無は8項目,誤嚥の種類は14項目の組み合わせで100%判別可能であった.この結果から各項目の重み付けを行い,誤嚥検出シートを作成,併せて評価票とマニュアルについても検討し,2002年版評価票 (ver.3.0) を作成した.

【考察】新評価票の各項目は,評価時点の経口摂取の状態や口腔機能のみではなく,気道感染の罹患期間,呼吸器系の症状を中心とした全身状態,食物認知能力等を広く含み,臨床的に有用性が高いと考えた.今後,信頼性,有用性,妥当性を検討し,改訂の予定である.

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© 2004 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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