日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
研究報告
嚥下障害のある重症心身障害児(者)における服薬補助ゼリーの検討
尾形 明美若林 健司宮本 泰徳大塚 義顕向井 美惠
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2004 年 8 巻 2 号 p. 173-181

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抄録

目的:小児における服薬は,嚥下障害の有無に関わらず保護者にとっては大きな問題である.特に嚥下障害のある重症心身障害児(者)では,服薬に加え嚥下障害も考慮した製剤が求められている.しかしながら,服薬方法の実態についての報告は少なく,適切な剤形に関する検討も少ない.そこで本研究では,服薬補助に必要な要件を探るべく,アンケート調査ならびに試作した服薬補助ゼリーに関するモニター調査を実施した.

対象と方法:対象は,通所療育施設,大学病院,国立病院で摂食指導を受けており,経口で服薬している重症心身障害児(者)34名.対象児(者)の主たる介護者に対し,服薬に関するアンケート調査を実施し,普段の服薬状況として,①剤形,②種類, ③服薬方法について,併せて現在,服薬で困っている点や不満などを調査した.次に,今回試作した2種類の服薬補助ゼリー (A・B) について,使用感などについて調査を行った.

結果:薬の剤形は,顆粒または散剤が全体の9割以上の者に処方されていた.他にシロップ,錠剤が処方されていたが,中にはカプセルを処方されている者もみられた.薬の種類は, 2種または3種が最も多く,中には9種類処方されている者もいた. 服薬方法は剤形別にみると,顆粒・散剤では8割近くが,水以外の食品に混ぜての服薬だった.普段の食形態と剤形,あるいは嚥下障害程度と服薬方法が一致していない対象が多く認められた.服薬における何らかの問題を感じていると答えた介護者は9割を超え,特に量や確実な服用ができないことに不満を抱えていた.試作した服薬補助ゼリーの使用感は,特にサンプルBについて,普段の服薬より飲ませやすく,使ってみたいという回答も6割を超えていた.

考察:以上の結果から,嚥下障害児における服薬補助においては,嚥下障害程度を考慮した剤形や適切な服薬方法の指導が求められていると考えられた.

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© 2004 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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