日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
原著
Videofluorographyの評価に関する信頼性の検証
― 検者内および検者間における検討 ―
戸原 玄千葉 由美中根 綾子後藤 志乃大内 ゆかり寺中 智大庭 優香森田 定雄山脇 正永中島 純子植松 宏
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2005 年 9 巻 2 号 p. 139-147

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抄録

目的:摂食・嚥下障害の評価法のうちVideofluorography(以後VF)は最も優れているとされる.しかしVFの評価は主観に依存する部分が多く,その再現性を確立する必要がある.そこで本研究では検者間および検者内での一致率に関する信頼性の検証を試みた.対象・方法:歯科医師5名,言語聴覚士1名,看護師1名に,摂食・嚥下障害の典型的な症状である口腔期障害例,咽頭残留例,喉頭内侵入例,嚥下前誤嚥例,嚥下中誤嚥例,嚥下後誤嚥例の6症例のVF側面像を合計4回評価させた.評価には我々の作成したVF評価用紙および評価基準を用いた.一致率はCohen's Kappa統計量にて分析した.結果:検者間の全項目の一致率の平均は,0.24-0.34と低かった.誤嚥量,Penetration-Aspiration Scaleなど誤嚥に関連する項目は,高度の一致率が得られたが,それ以外の項目の一致率は全般的に低かった.また,評価の回数を重ねても一致率は改善しなかった.検者内の全項目の一致率の平均は0.53-0.67と中等度から高度であった.また項目別でも全般に高い一致率を呈した.考察:ある程度の知識と経験をもった検者であれば誤嚥の判定に大きな差はなかった.しかしVFは患者の状態により検査の進め方を変える必要があり,同一症例でも検査の進め方次第で誤嚥の発生率が異なる.従って評価のトレーニングを行う一方,十分な知識と経験をもつ専門家とともに検査することが評価の信頼性を高めると考えられた.また,口腔や咽頭などの動きに対する検者間一致率のばらつきは訓練の適応決定に影響するため,検査後のカンファレンスを行って方針を決定するなど,評価体制の整備が重要であると考えられた.

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© 2005 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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