抄録
2008年5月、中国四川省で発生した汶川地震は、四川省を中心に死者・行方不明者およそ9万人もの被害をもたらした。この未曾有の災害に対して、中国政府はわずか3年間で復興を終え、その後の発展段階に移行してすでに久しい。迅速かつダイナミックな復興であったことが最大の特徴である。改革開放政策下での経済成長期における災害復興であり,世界の復興事例からみれば特殊である.しかし汶川地震の復興過程で積み上げられた様々な事実の中には,政治経済体制や経済発展段階の相違を超えて共有すべき発想、知見が見られる.本稿では、被災からの現在に至るまでの継続的な視察調査経験をもとに,中国社会が未曾有の大災害に対してどのように対処し、復興を実現したのかをこれまでの現地調査や関係者ヒアリング等の調査データをもとに整理し,今後のより良い災害復興に向けた議論を行う際に深めるべき論点を提示する。