抄録
本研究は、福島県を対象として、未曽有の原子力災害からの復興に向けた起点かつ基盤としての位置づけのもとに実施され完了になった除染の実績と効果を整理した上で、除染に関する今後の課題を提示するとともに、除染を起点かつ基盤とする福島復興政策からの教訓を提示することを目的とするものである。本研究では、福島県内の全59市町村に対するアンケート調査の結果などに基づき、今後の課題として、除去土壌等の中間貯蔵施設への早期搬出と個別条件に応じた仮置場の原状回復と除去土壌等の長期保管・管理のあり方の検討、新たな法律に基づく環境回復を目的とする森林や河川・ため池等の“除染”の実施などを提示している。教訓として、除染を放射線防護手段の一つとして位置づける放射線防護政策の確立の必要性、多様な被災者の多様な生活再建の実現を支援する政策の確立の必要性を提示している。