抄録
災害後の社会的対応は複雑なプロセスであり、学際的に研究することの意義は大きい。本稿は、筆者らが岩手県陸前高田市小友町で行ってきた聞き取り調査に基づき、東日本大震災で発生した津波からの避難行動について、防災研究と民俗学という二つの学問から検討する。それによって、避難行動が、その都度の判断を伴うプロセスであること、そして日常生活での知識や経験によって方向づけられているということを明らかにし、避難行動を、人類学者インゴルドの言う「棲まう者の観点」から捉え、生活世界に枠づけられたものとして理解することの重要性を指摘する。そのうえで、この協働研究を発展させ、人々の津波時の避難行動や避難経路の選択に関わる理解を深めることで、今後の被害軽減に役立てるための方途について考察する。