日本災害復興学会論文集
Online ISSN : 2435-4147
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一般論文
  • 福島原発事故から10年目を迎えて
    川﨑 興太
    原稿種別: 一般論文
    2021 年 18 巻 p. 1-10
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/05
    ジャーナル フリー
    本研究は、福島県を対象として、未曽有の原子力災害からの復興に向けた起点かつ基盤としての位置づけのもとに実施され完了になった除染の実績と効果を整理した上で、除染に関する今後の課題を提示するとともに、除染を起点かつ基盤とする福島復興政策からの教訓を提示することを目的とするものである。本研究では、福島県内の全59市町村に対するアンケート調査の結果などに基づき、今後の課題として、除去土壌等の中間貯蔵施設への早期搬出と個別条件に応じた仮置場の原状回復と除去土壌等の長期保管・管理のあり方の検討、新たな法律に基づく環境回復を目的とする森林や河川・ため池等の“除染”の実施などを提示している。教訓として、除染を放射線防護手段の一つとして位置づける放射線防護政策の確立の必要性、多様な被災者の多様な生活再建の実現を支援する政策の確立の必要性を提示している。
  • 民俗学と防災学の協働の試み
    木村 周平, 辻本 侑生, 浅野 久枝, 池田 浩敬, 川島 秀一, 小谷 竜介, 中野 泰
    原稿種別: 一般論文
    2021 年 18 巻 p. 11-20
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/05
    ジャーナル フリー
    災害後の社会的対応は複雑なプロセスであり、学際的に研究することの意義は大きい。本稿は、筆者らが岩手県陸前高田市小友町で行ってきた聞き取り調査に基づき、東日本大震災で発生した津波からの避難行動について、防災研究と民俗学という二つの学問から検討する。それによって、避難行動が、その都度の判断を伴うプロセスであること、そして日常生活での知識や経験によって方向づけられているということを明らかにし、避難行動を、人類学者インゴルドの言う「棲まう者の観点」から捉え、生活世界に枠づけられたものとして理解することの重要性を指摘する。そのうえで、この協働研究を発展させ、人々の津波時の避難行動や避難経路の選択に関わる理解を深めることで、今後の被害軽減に役立てるための方途について考察する。
  • スリランカにおける豪雨洪水災害を事例に
    土田 亮, 寶 馨
    原稿種別: 一般論文
    2021 年 18 巻 p. 21-32
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/05
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は、2017年5月にスリランカ民主社会主義共和国南西部で発生した豪雨洪水災害を対象に、サバラガムワ州ラトゥナプラ県ラトゥナプラ市における洪水被害時の住民の対応および復旧復興の実態と課題を把握することである。地域住民へのインタビュー調査の結果から、豪雨洪水災害による死者や怪我人はムッドゥワ地区では少なく、また事前の災害対策や人・物を避難させるタイミングを共有する必要があることや被災復旧・復興の労働負荷、経済的負担が慢性化する可能性が把握された。調査対象地ではこれまで親族や血縁、宗教コミュニティを中心とした地域知が平常時から機能しており、災害時でもその機能を果たしていた。水害常襲地において人々の生活をカバーするためには、地域知を利用した効果的な避難タイミングの導入とより住民のニーズに即した物資や金銭を含む外部支援が必要であると考えられる。
  • 平成30年7月豪雨で被災した広島県坂町の被災者用公営住宅入居者の声から
    成尾 春輝, 宮本 匠
    原稿種別: 一般論文
    2021 年 18 巻 p. 33-45
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/05
    ジャーナル フリー
    災害が発生した被災地では、被災者から、しばしば「申し訳ない」という声が聞かれる。自分自身が災害に襲われたにも関わらず、被災者はなんらかの負い目や自責感を抱えているのである。そこで、本稿では平成30年7月豪雨で被災した広島県安芸郡坂町で行った聞き取り調査をもとに、なぜ被災者が申し訳なさを感じるのか、申し訳なさを感じることが被災者の生活にどのような影響を与えるのか、それを克服する鍵がどこにあるのかについて明らかにすることを目的とした。調査の結果、坂町においては、被災者の抱える申し訳なさが被災者間の関わりを阻害していることが分かった。一方で、被災者が抱える申し訳なさの中には、解消されるべき側面だけでなく、他者との連帯の可能性を見出すことができるものもあることを、申し訳なさを四つに類型化することで指摘した。この類型化から見えたことは、申し訳なさは被災者だけでなく、被災地から遠く、なんら責任がないように見える人々にも生じることであり、被災地外の人々も含めた連帯の可能性をもつことであった。
  • 平成30年7月豪雨広島県坂町の住民福祉協議会の事例
    立部 知保里, 宮本 匠
    原稿種別: 一般論文
    2021 年 18 巻 p. 46-57
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/05
    ジャーナル フリー
    本稿は、平成30年7月豪雨で被災した広島県坂町の住民福祉協議会(住民協)を対象に、既存の住民自治組織が災害時に果たした役割を明らかにし、その強みと限界、およびそれをどのように補完していくべきかを考察したものである。発災後、住民協は避難誘導や安否確認、避難生活で助け合いの主体となっただけでなく、復旧・復興の過程で外部支援と地域をつなぐ役割を担った。ただし、年代や居住年数などの地域性によって、各住民協の災害時の対応にも違いがみられた。住民協には自立性の強さや平時から機能する体制があるといった強みがある一方で、住民協に加入していない世帯は排除される、住民協間の横のつながりが薄いなどの限界がある。それらの限界を補完するためには、地域内外のボランティアや内発的な新たな住民組織とのかかわりが重要である。
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