日本災害復興学会論文集
Online ISSN : 2435-4147
一般論文
被災者が抱える申し訳なさによる苦しみと普遍的連帯の可能性について
平成30年7月豪雨で被災した広島県坂町の被災者用公営住宅入居者の声から
成尾 春輝宮本 匠
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2021 年 18 巻 p. 33-45

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抄録

災害が発生した被災地では、被災者から、しばしば「申し訳ない」という声が聞かれる。自分自身が災害に襲われたにも関わらず、被災者はなんらかの負い目や自責感を抱えているのである。そこで、本稿では平成30年7月豪雨で被災した広島県安芸郡坂町で行った聞き取り調査をもとに、なぜ被災者が申し訳なさを感じるのか、申し訳なさを感じることが被災者の生活にどのような影響を与えるのか、それを克服する鍵がどこにあるのかについて明らかにすることを目的とした。調査の結果、坂町においては、被災者の抱える申し訳なさが被災者間の関わりを阻害していることが分かった。一方で、被災者が抱える申し訳なさの中には、解消されるべき側面だけでなく、他者との連帯の可能性を見出すことができるものもあることを、申し訳なさを四つに類型化することで指摘した。この類型化から見えたことは、申し訳なさは被災者だけでなく、被災地から遠く、なんら責任がないように見える人々にも生じることであり、被災地外の人々も含めた連帯の可能性をもつことであった。

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