抄録
東日本大震災の被災特性として、住宅被災のみならず生業被災が顕著であるが、復興計画の遅れから生業再建が長期に停止し、この間をつなぐ生業支援ニーズは強い。しかし阪神淡路大震災以来の現行の被災者支援制度は都市型災害対応であり、地方型災害の生業支援ニーズに対応しえていない。一方、今次震災ではグループ補助金、特別融資、二重債務解消スキームなどの譲許性の強いアドホックな公助措置が導入されたが、筆者が継続的に行なった被災地聴取り調査によれば、これら諸措置は「産業復興」の文脈で中堅・大手グループや間接被災者に向かい、零細事業者のニーズに届かぬものとなっている。零細事業者向けの数少ない措置として仮設施設無償提供事業があるが、関連措置が有機的にリンクしていない。今後、被災事業者個々のニーズに寄り添う仮設事業への資金支援、また将来へ向けた地域産業復興構想に事業計画を連結させてゆく高度なアドバイス機能が求められよう。