2007 年 40 巻 1 号 p. 83-87
緩徐に進行する汎血球減少症を呈した51歳男性の長期血液透析症例. 各種検査所見より血液疾患や膠原病などに起因する汎血球減少症は否定的であった. 画像検査上, 脾腫と門脈側副血行路の発達を認めるものの肝硬変等の肝疾患の合併は考えにくく, 特発性門脈圧亢進症 (IPH) が強く疑われた. 経過中白血球減少症が進行し, 発熱症状が持続するようになったため, G-CSF製剤や抗生剤による治療を継続したが明確な効果は得られず, 摘脾術を施行した. 術後速やかに汎血球減少症は改善し, 発熱症状も消失した. 肝生検で肝炎・肝硬変を示唆する所見を認めなかったことから, 汎血球減少症の原因として特発性門脈圧亢進症と診断した. 透析症例において汎血球減少を認めた場合は, IPHも念頭におき精査を進める必要があると思われる.