抄録
近年ASO (arteriosclerosis obliterans) に対する治療の選択肢は拡がっている. アフェレシス治療の一法である加温式リサーキュレーション法 (DFサーモ法) はASOに対して有用と報告されているが, 重症ASOに関する報告はこれまでに1例のみである. 今回われわれは, 重症ASOを有する血液透析患者2例に対して, 本法による治療を試みた. 症例1は76歳, 女性. 2000年11月, 糖尿病性腎症による末期腎不全のため, 血液透析を導入. 2005年1月, 靴ずれを契機に右第1趾に潰瘍を形成した. 薬物療法, インターベンション治療を試みるも改善が得られないため, 同年9月よりDFサーモ法を導入. 以後改善を認めた. 症例2は71歳, 男性. 約30年前より糖尿病のため, 近医にて治療を受けていた. 2005年7月より, 右足の色調不良のため近医にて治療を受けていたが, 改善を認めず, また下痢, 食欲不振, 脱水ならびに腎機能の悪化が出現したため2005年8月, 当科に入院となった. 入院後, 血液透析を導入し, 同年10月よりDFサーモ法を導入した. 5回目施行後, 潰瘍の悪化ならびに創部感染の重症化をきたしたため, 緊急的に右下腿切断術を余儀なくされた. 自験例2例を通じて, DFサーモ法は重症ASOに対しても有効である可能性が示唆された. 本法について症例を提示するとともに, 若干の文献的考察を加え, 報告する.