日本透析医学会雑誌
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症例報告
腎浸潤による急性腎不全をきたし血液透析を必要とした成人T細胞性白血病の1例
麓 由紀子大納 伸人川口 博明前田 拓郎山下 恵里香西田 知夏徳永 公紀阪本 卓爾曽我部 篤史鈴木 紳介魚住 公治野〓 剛坪内 博仁
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2007 年 40 巻 10 号 p. 865-869

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抄録
59歳, 女性. 2005年6月皮疹が出現し, 皮膚生検にて成人T細胞性白血病 (ATL) と診断され, 内服治療を開始した. 2006年4月まで経過は良好であったが, 5月より表在リンパ節腫脹, 7月には腎機能障害, 高カルシウム血症が出現し, 8月11日当科に入院した. 入院時尿素窒素80.9mg/dL, 血清クレアチニン5.1mg/dLと著明な上昇を認めた. さらに全身浮腫と胸腹水の貯留を認めたために急性腎不全と診断し, 血液透析を併用しながら多剤併用化学療法を行った. 化学療法前の腹部エコー検査では両側腎ともびまん性に腫大し, 皮質の輝度上昇と錐体のエコーレベルの低下も認められたが, 腎盂, 腎杯の拡張は認められなかった. 腹部単純CT検査でも腎臓は両側ともびまん性に腫大し, 内部に不整な高吸収域が散在していた. 化学療法後には両腎腫大は改善し, 腎機能も改善したために血液透析から離脱可能となったが, ATL増悪のために死亡した. 病理解剖所見では, ATL細胞浸潤が糸球体や尿細管への浸潤は認めず, 間質へのびまん性浸潤とそれによる尿細管の圧迫所見を認めた. ATLで腎腫大のみられる場合には, ATL細胞の浸潤が急性腎不全の原因となることがあり, 透析療法の併用を考慮した化学療法が必要となる場合がある.
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© 2007 一般社団法人 日本透析医学会
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