日本透析医学会雑誌
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症例報告
ステロイド療法が著効した橋本脳症の透析患者の1例
木村 記代米田 誠横山 広美村山 順一高橋 直生藤井 明弘木村 秀樹栗山 勝吉田 治義
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2007 年 40 巻 2 号 p. 177-181

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抄録

症例は77歳, 女性. 糖尿病性腎症による慢性腎不全であったが, 透析導入は拒否していた. しかし, 体液貯留過剰のため緊急導入となった. 週2回の維持透析にて尿毒症は改善したが, 入院時より傾眠傾向および意欲・食欲の低下を認め, 次第に増悪し, 看護への抵抗などの精神症状も出現した. 精神科にて, せん妄状態と診断された. 神経内科では, 頭部CT・MRI上は加齢に伴う脳萎縮・慢性虚血性変化を認めるのみであったが, 脳波で全般性徐波を認めたことから代謝性脳症や自己免疫性脳症の可能性が示唆された. 甲状腺機能は正常であったが, 抗甲状腺サイログロブリン (TG) 抗体が100U/mL以上と強陽性であったことより橋本脳症が疑われた. 橋本脳症で特異的な抗N末端α-エノラーゼ (NAE) 抗体が陽性であったため橋本脳症と診断され, PSL 30mgの内服が開始された. 精神神経症状は著明に改善し, 脳波も改善を認めた. 透析患者の意識障害の原因は多種に及ぶが, 橋本脳症の可能性も念頭におき, 甲状腺機能が正常であっても, 抗甲状腺抗体や抗NAE抗体を測定することが早期診断と治療に繋がると考えられた.

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© 2007 一般社団法人 日本透析医学会
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