日本透析医学会雑誌
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原著
内シャント早期穿刺とその成績
加藤 琢磨炭谷 晴雄川原 和彦水口 潤川島 周金山 博臣
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2007 年 40 巻 4 号 p. 333-337

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抄録

一般には内シャントの早期穿刺は避けるべきとされ, 日本透析医学会の「慢性血液透析用バスキュラーアクセスの作製および修復に関するガイドライン」 (以下, 日本透析医学会ガイドライン) でも自己血管内シャントの使用は作製後14日目以降を, 人工血管内シャントの使用は術後3~4週目以降を推奨している. しかし, 透析導入が早期に求められる症例に対するカテーテルの挿入は, 感染, ADLの低下といった患者のQOLの低下をもたらす可能性がある. 当院では内シャント早期穿刺を行っており, 2001年4月から2003年3月までの2年間に作製され, 早期穿刺された内シャント95例 (内自己血管内シャント68例, 人工血管27例) の長期成績を, 個々の穿刺開始から3年間までを観察期間とし検討した. 自己血管内シャントの一次開存率は術後1年, 2年, 3年でそれぞれ72.1%, 64.7%, 60.3%であり, 二次開存率はそれぞれ76.5%, 70.6%, 67.6%であった. 人工血管内シャントの一次開存率は術後1年, 2年, 3年でそれぞれ70.4%, 48.1%, 44.4%であり, 二次開存率はそれぞれ85.2%, 81.5%, 74.1%であった. 術後1か月以内の早期合併症は, 縫合不全によるグラフト露出1例, 内シャント閉塞5例 (自己血管内シャント5例) であった. 内シャントの早期穿刺を行うことで, 一時的に挿入されるカテーテルによる合併症とそれに伴う入院を回避することができる. このことは患者のQOLの維持だけでなく, 医療経済にも貢献が期待できる.

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© 2007 一般社団法人 日本透析医学会
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