日本透析医学会雑誌
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原著
認知症を呈する血液透析患者に対する自己抜針防止用アラーム付きベルトの臨床的有用性
新井 浩之眞田 幸恵森薗 靖子佐藤 智栄子後藤 和泉島内 千登里久保 和雄鈴木 恵子鈴木 利昭
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2007 年 40 巻 8 号 p. 649-654

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抄録

血液透析中に自己抜針のおそれがある患者, あるいは自己抜針歴がある患者に対する監視強化の目的として, アラーム付きベルト (以下, 本器具) を作製した. 本器具は, アラームとベルトが一体となっており, 血液回路を固定するようにして患者の手関節部に軽く巻き付けて使用する. ベルトの固定は, マジックテープとスナップボタンの二段階となっており, スナップボタンを外すとアラーム音を発報する仕組みである. 記憶障害と見当識障害を有し, 軽度の認知症を呈する86歳の男性 (2度の自己抜針歴あり) に対して, 本器具を透析中に装着して, その有用性を検討した. 患者が本器具を外そうとする注意動作の回数は11回の透析で計20回であり, スナップボタンが外されてアラームが発報された危険動作は計5回であった. また, 本器具の代わりに通常のアラームなし止血ベルト (以下, 止血ベルト) を使用した場合には, スタッフが気付くまでベルトが外されたことがわからないため, 発見が遅れた場合には抜針事故に繋がる危険性が高かった. 一方, 本器具使用時には, 危険動作をアラーム音で確認できるため, 止血ベルト使用時にくらべて安全性が増した. 以上より, 本器具は, 患者へ装着も簡便であり, 透析中の自己抜針防止のための監視強化の一助として有用と思われた.

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© 2007 一般社団法人 日本透析医学会
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