2008 年 41 巻 10 号 p. 743-748
近年,病原性大腸菌O-157(O-157)による集団感染が日本各地で散発的に認められる.今回われわれは慢性血液透析(HD)患者がO-157に感染し,高度の意識障害をきたした症例を経験した.症例は70歳,男性.糖尿病性腎症による末期腎不全で約5年間HDを施行していた.平成14年7月13日出血性腸炎で入院し,入院後急速に高度の意識障害を呈し,便培養からO-157が検出された.保存的治療のみで意識状態は完全回復した.血小板の減少はなく溶血性尿毒症症候群(HUS)の診断基準を満たさなかったが,O-157感染症による意識障害と考えられた.HD患者がO-157感染をおこした際には,可逆的な意識障害をきたすことがあり,治療に注意を要すると考えられた.