日本透析医学会雑誌
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症例報告
ペットのネコが原因でPasteurellaによるPD腹膜炎を発症した2例
岩嶋 和子辻本 吉広田畑 勉細見 由佳二上 志帆子梶應 陽子井上 隆
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キーワード: PD腹膜炎, ネコ, 患者指導
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2008 年 41 巻 3 号 p. 213-218

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抄録

ペットのネコが原因でPasteurellaによるPD腹膜炎を発症した2例を経験したので若干の考察をまじえて報告する.[症例1]患者はPD歴3年の41歳,男性で,夜間サイクラー使用中に,飼いネコが注液チューブを咬んで破損した.翌日にPD腹膜炎を発症し,CEZ 1g/日,TOB 30mg/日の腹腔内貯留を開始した.下痢が頻回なため第4病日からPAPM/BPを0.5g/日で経静脈投与して治癒した.PD排液のグラム染色で菌は検出されなかったが,培養でP. multocida以外のPasteurella菌と判明した.ネコによるP. multocida以外のPasteurella菌のPD腹膜炎報告例は,Walletらに続いて2例目となる.[症例2]患者はPD歴2か月の29歳,女性で,排液バッグ付きYセットで排液中にバッグの破損から液漏れを認めた.数時間前に飼いネコが排液バッグの上を歩いていたことを思い出した.それから13日後にPD腹膜炎を発症し,CEZ 1g/日,TOB 30mg/日の腹腔内貯留で治癒した.PD排液のグラム染色で菌は検出されなかったが,培養でP. multocidaが検出された.Pasteurella症は感染後24時間以内に発症すること,および破損したバッグは排液用であったことから,PD腹膜炎発症につながる感染は発症24時間以内にあったと考えられる.PD患者に,ペットから感染する疾病の存在を伝え,衛生環境整備の重要性を指導することで今後の予防に努めたい.

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© 2008 一般社団法人 日本透析医学会
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