日本透析医学会雑誌
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原著
当院の透析患者の四肢・体幹の特発性出血に関する検討
崔 啓子栗田 宜明西 隆博三 瀬 直文多川 斉杉本 徳一郎
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キーワード: 特発性出血, 透析患者
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2009 年 42 巻 2 号 p. 145-149

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抄録

【背景】維持透析患者での特発性の出血の特徴を明らかにすることを目的とした.【方法と結果】対象は1987年1月から2007年8月の間に,当院に特発性出血のため入院した,もしくは入院中に特発性に医学管理を要する出血を発症した維持透析患者11例(男性9例,女性2例)である.出血は特発性に限り,また消化管,脳,眼底,バスキュラーアクセス関連の出血および播種性血管内凝固症候群に伴う出血は除外した.10例が血液透析患者,1例が腹膜透析患者であった.出血のイベントは計13件認め,腎周囲出血5件,後腹膜出血2件,腹腔内出血1件,腹直筋内出血1件,大網出血1件,下肢動脈出血3件であった.平均年齢は59±12(36~81)歳,平均透析歴は14±10(5~32)年,原疾患は慢性糸球体腎炎9例,腎硬化症2例であった.関連因子として抗血小板薬使用(2例),抗凝固薬使用(4例),高血圧患者(8例)があった.無痛性出血は4件認めた.治療は経皮的動脈塞栓術7件,外科的手術1件,保存的治療5件であった.10例は軽快退院し,1例は入院中に他疾患で死亡した.【考察】透析患者の特発性出血には腎不全による血小板機能障害のほか,透析歴,薬剤,血圧など多因子が関与する.典型的には疼痛症状を伴うが,時に疼痛を呈さない例もあるので,急速な貧血や血圧低下の際の鑑別診断に重要と思われる.

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© 2009 一般社団法人 日本透析医学会
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