日本透析医学会雑誌
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症例報告
軟部組織巨大石灰化に対してエチドロネート長期投与が奏功するも,病的骨折をきたした2透析例
青木 明子安田 雅子田中 純子内田 啓子田中 好子新田 孝作秋葉 隆
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2009 年 42 巻 2 号 p. 165-171

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抄録
血液透析患者の巨大な軟部組織石灰化病変に対しエチドロン酸二ナトリウム(EHDP)(ダイドロネル®)の高用量長期投与が奏功した2症例について以前報告した1) .しかし,その後に2症例とも病的骨折をきたしたので再度報告する.症例1は61歳,女性,1993年血液透析導入.1997年頃より両肩,恥骨前部に疼痛出現し,同部位に硬い腫瘤を触知.また,抗生剤に反応しない炎症反応の上昇があり,X線にて疼痛部位に一致する石灰化を認めた.EHDP 300 mg/日を7か月,200 mg/日を1年半,200 mg隔日を半年間内服したところ,疼痛の軽減と石灰化の縮小を認めた.その後EHDP 200 mg×28日/10週休薬を5クール行ったが,疼痛と炎症反応の再増強をみたため400 mgを3か月内服,3か月休薬に変更した.石灰化病変は縮小したが骨密度の低下とともに2004年,肋骨骨折,中足骨骨折をきたした.症例2は60歳,男性,1991年血液透析導入.1995年頃より両肩,股関節に疼痛のある硬い腫瘤が出現.C-reactive proteinの上昇,X線にて疼痛部位に一致する石灰化を認めた.1998年からEHDPの内服を開始.200 mg/日×4週間内服/10週休薬,8週間内服/20週休薬により疼痛の改善は得られたものの,石灰化病変が大きく拡大傾向であったため,200 mg~400 mgの9か月間持続,200 mg 3か月内服/3か月休薬を4クール行った.石灰化の縮小を認め炎症反応は改善したが,2002年9月,骨密度の低下とともに無症候性肋骨骨折をきたした.EHDPは異所性石灰化の改善には有効であるが,骨に対する作用からみると骨吸収抑制だけでなく骨石灰化抑制も強いとされている.今回の症例はそのため骨量が低下して骨折をきたしたと考えられた.
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© 2009 一般社団法人 日本透析医学会
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