日本透析医学会雑誌
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原著
血液透析療法における透析膜材質の違いによるHCV(hepatitis C virus)吸着についての検討
小寺 宏尚大橋 篤中井 滋福田 誠大西 重樹八城 正知鍋島 邦浩村上 和隆富田 亮長谷川 みどり比企 能之杉山 敏
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キーワード: HCV, HCV抗原量, 透析膜, 疎水性
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2010 年 43 巻 1 号 p. 55-60

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抄録

透析患者のHCV量は,非透析患者のHCV陽性のそれに比し低いといわれている.われわれは,AM-FP1.3(再生セルロース膜:CU),FB-150E(セルローストリアセテート膜:CTA),BK-1.6P(ポリメチルメタクリレート膜:PMMA)およびF-70S(ポリスルホン膜:PS)のダイアライザーで透析をうける患者の透析前後のHCV抗原(コア蛋白質)濃度の変動により,除去動態を検証した.その結果,1回透析あたりのHCV抗原減少率は,F-70S症例で32.7±10.5%と高く,BK-1.6P症例19.0±2.2%,FB-150E症例10.4±1.7%,AM-FP1.3症例8.8±2.2%であった.次に,患者血清を用いたin vitro評価により透析膜材質ごとのHCV抗原の除去能を比較した.血液回路にAM-FP1.3,FB-130U,BK-1.3PおよびF-60Sのダイアライザーを血液回路に接続し,HCV含有アルブミン溶液を再灌流させ,経時的にHCV抗原量およびアルブミン(Alb)濃度を測定した.HCV抗原量は再灌流前に比し再灌流後に,F-60Sで25.8%,BK-1.3Pで20.5%,FB-130Uで16.0%およびAM-FP1.3で10.5%減少した.さらに透析膜へのHCV吸着を確認するため,上記検証に用いた血液回路に非イオン性界面活性剤入り洗浄液を再灌流させ,洗浄液中のHCV抗原量を測定した.洗浄液中に溶出されたHCV抗原量は,in vitro実験で減少したHCV抗原量とほぼ等しい量であった.以上の結果から,血中のHCVは透析膜で吸着除去されると考えられた.

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© 2010 一般社団法人 日本透析医学会
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