抄録
頻回の腹部手術の既往は,一般的に腹膜透析導入の支障になると考えられている.今回われわれは,生下時に鎖肛,外性器奇形,尿道下裂などがあり,イレウスを含めた頻回の腹部手術歴があり,現在も巨大結腸を有する成人に対してCAPD(continuous ambulatory peritoneal dialysis)導入を試みて,順調な経過をたどっている症例を経験したので報告する.症例は41歳,男性.職業:会社員.既往歴として生下時に鎖肛,外性器奇形,尿道下裂などがあり,直ちに人工肛門造設術を受けている.5歳時に会陰に肛門を造設し,人工肛門を閉鎖している.以後,イレウスを含めた頻回の腹部手術歴がある(本人,家族とも詳細な病名・術式は不明).小学校中学年以降,成人になるまで医療から外れている.巨大結腸を有し,成人後も尿便失禁があり,現在も紙おむつを使用している.平成6年,尿管結石が原因の左膿腎症で,左腎摘除術を施行した.平成15年から尿路障害を原因とする慢性腎不全で保存的加療を受けて,平成18年3月に血液透析を導入された.度重なるシャントトラブルで当院に紹介され,同年5月末,患者の強い希望もあり,十分検討の上,腹膜透析導入にチャレンジした.全身麻酔下に,術痕のない上腹部正中切開で内視鏡を用いて腹腔内を観察し,右下腹の手術痕の外側から骨盤~上腹部へは十分な腹腔容量がとれることを確認して,バスタブカテーテル法でテンコフカテーテルを留置した.その後の導入は順調で,残腎機能と併せて充分なクリアランスが得られ,以後,大きなトラブルもなく,現在に至っている.イレウスを含めた頻回の腹部手術歴や,巨大結腸の存在も,充分な検討・観察をすれば,必ずしも腹膜透析導入の禁忌とはならないと考え,ここに報告する.