抄録
透析患者は多様な身体的症状に加え社会的活動障害を有することから,これに基づく不安抑うつ状態をきたしやすい.このためうつ病を早期発見する医療者の働きかけが求められる.そこで2007年12月から2008年3月の期間において,当科で透析療法を行った61例を対象とし,日本版精神健康調査票(The General Health Questionnaire)短縮版(以下,GHQ-28)による調査を行った.調査対象では健常者と比較して,総合点と要素因子A(身体的症状),B(不安と不眠),D(うつ傾向)の得点が高値であった.次に精神医学の専門医によって米国精神医学会のDSM-IV-TRにおける大うつ病性障害(以下,うつ病)に該当するかを判定したところ,該当者は米国と同水準の24.6%であり,日本都市部の一般住民の有病率である1.2%を大きく上回った.うつ病あり群となし群との間でGHQ-28得点を比較すると,総合点,要素因子ともにうつ病あり群で高値であり,うつ病のスクリーニングを行うのに適切なカットオフ値は,GHQ-28総合点では8点,要素因子D(うつ傾向)では1点であった.透析患者に対してGHQ-28を用いることは,うつ病のスクリーニングに有用であると考えられた.