日本透析医学会雑誌
Online ISSN : 1883-082X
Print ISSN : 1340-3451
ISSN-L : 1340-3451
原著
血液透析患者の鉄代謝指標の日内変動
水口 隆岡田 和美水口 潤川島 周
著者情報
ジャーナル フリー

2010 年 43 巻 6 号 p. 493-499

詳細
抄録
血液透析(HD)患者における鉄代謝指標の日内変動を観察した.HD患者の血清鉄(sFe)値は19時54±29 μg/dLに比して10時74±35 μg/dLと有意(p=0.0064)に10時が高値であった.総鉄結合能(TIBC)と血清フェリチン(sFtn)値は19時と10時で有意差はなかった.トランスフェリン鉄飽和率(TSAT)は19時22.6±11.9%に比して10時30.8±15.7%と有意(p=0.0060)に10時が高値であった.sFe値とTSATには午前中が夕方に比して高値を示す日内変動が観察された.sFtn値100 ng/mL未満のHD患者を採血の時間により午前中の採血群(A群:8:30~10:30),午後の採血群(B群:13:30~14:30),夕方の採血群(C群:17:00~19:00)に分類すると,sFe値はB群56±20 μg/dLおよびC群55±21 μg/dLに比してA群70±24 μg/dLと有意(p=0.015,0.011)にA群が高値であった.TSATはB群22.2±7.9%およびC群20.8±7.8%に比してA群27.1±9.5%とA群が有意(p=0.031,p=0.009)に高値であった.貯蔵鉄欠乏の症例においてもsFe値とTSATの日内変動の存在が考えられた.TSATのcut off値20%による鉄欠乏の診断効率は全体で34.2%,A群で22.9%,B群で50.0%,C群で27.8%であり,いずれも低値であった.静注用鉄剤投与後にHb 1.5 g/dL以上上昇した症例は,sFtn値100 ng/mL以下の症例90例中33例(36.7%)であった.このなかでTSAT 20%以下の症例では19例中36例(52.8%)で過半数であった.HD患者には午前中高値で夕方が低値なsFe値やTSATの日内変動が存在する.このためTSATによる鉄欠乏の診断効率は低値であり,TSATは鉄欠乏の指標としては不適である.
著者関連情報
© 2010 一般社団法人 日本透析医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top