日本透析医学会雑誌
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原著
短期型バスキュラーアクセスにおける合併症の比較検討
内田 隆行安藤 勝信小藤 誠也早坂 秀幸中島 逸郎駒田 敬則平井 啓之森 穂波吉田 泉田部井 薫
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2011 年 44 巻 3 号 p. 229-235

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抄録

持続的血液浄化療法(以下CBP:continuous blood purification)や維持透析患者のシャントトラブル時のバスキュラーアクセスとして短期型バスキュラーカテーテルが用いられている.しかし使用中のトラブルとして感染や脱血不良をしばしば経験する.そこで,当院において2004年以降留置されたカテーテルについて,脱血不良,感染によるカテーテル抜去の現状を検討した.その結果,(1) 199本のカテーテル挿入で,トラブルにより抜去されたのは65本(32.7%)で,感染30本,脱血不良18本,血栓11本などであった.(2) 感染が原因で抜去した30本の解析では,トリプルルーメンが,18/97本(19%)と多い傾向であった.挿入部位別の検討では,差はなかった.治療方法では,間欠治療群と比し持続治療群で有意に多かった.(3) 脱血不良にて抜去された18本の解析では,トリプルルーメンで有意に多かった.挿入部位別比較では,差はなかった.脱血孔の形状での比較では,サイドホールタイプで脱血不良が有意に多かった.そこで,さらに,先端形状の異なる2種類のエンドホールタイプのカテーテル,ナイアガラスリム(Bard Access Systems社製)とジェントルキャス(日本シャーウッド社製)の脱血不良の発生頻度について比較検討を行った.その結果,脱血不良の頻度はナイアガラスリムでは12/152本(7.9%),ジェントルキャスでは32/184本(17.4%)で,フィッシャーの直接確率検定を用いて検定評価を行った結果,ナイアガラスリムにおいて有意に脱血不良が少なかった(p<0.05).挿入部位別検討では,ジェントルキャスにて大腿静脈留置で有意に脱血不良が多かった(p<0.01).ナイアガラスリムを使用することで脱血不良の発生頻度が68.2%低下することが示された.以上より,脱血孔の形状での比較では,エンドホールタイプで脱血不良が有意に少なかった.エンドホールタイプのカテーテルでも先端形状,留置部位により脱血不良の発生頻度が異なることから適切なカテーテル,留置部位の選択が必要と考えられる.

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© 2011 一般社団法人 日本透析医学会
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