日本透析医学会雑誌
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症例報告
自己血管標準内シャント感染から大動脈グラフト感染,感染性大動脈瘤,大動脈食道瘻をきたした血液透析患者の1剖検例
山口 裕輝子深水 圭那須 誠薗田 和弘甲斐田 裕介安達 武基春日 朱門若杉 大輔永野 真喜雄田中 将博柴田 了楠本 拓生吉村 潤子上田 誠二奥田 誠也
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2011 年 44 巻 3 号 p. 261-268

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抄録

症例は73歳,女性.腎硬化症による腎不全のため1999年より維持透析を開始.2000年,無症候性解離性大動脈瘤に対して上行弓部大動脈置換術,下行大動脈ステントグラフト内挿術を施行した.2006年3月26日に発熱を認めたため,当院を受診.左上肢シャント部に悪臭を伴う膿性の浸出液を認めたため,シャント感染症の診断にて入院となった.血液,シャント部膿瘍の培養からStaphylococcus aureusを認め,抗生剤による治療を開始した.第3病日に胸部X線写真にて大動脈弓部の陰影の拡大および胸部CT検査にて下行大動脈に大動脈瘤を認め,大動脈グラフト感染および感染性大動脈瘤と診断した.その後抗生剤による加療を継続していたが,第10病日に突然吐血し,ショック状態となった.感染性大動脈瘤の破裂および大動脈食道瘻形成と診断し,第12病日に上行弓部下行大動脈全置換術,大網充填術,食道切除,食道瘻,胃瘻形成術を施行するも,術後,全身状態が悪化し,第30病日に敗血症性ショックにて死亡した.透析患者は感染症に罹患する危険性が高く,重症化しやすく,かつ死亡率も高い.High riskな透析患者に感染徴候を認めた場合には本症例のような感染性大動脈瘤も鑑別疾患の一つとして考慮すべきであると考えられた.

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© 2011 一般社団法人 日本透析医学会
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