日本透析医学会雑誌
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症例報告
高カルシウム血症からサルコイドーシスの診断に至った維持透析患者の1例
越智 文美若井 幸子中山 一誠安井 由紀子加賀 俊江雫 淳一阿部 恭知遠藤 真理子小倉 三津雄新田 孝作
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2011 年 44 巻 7 号 p. 649-654

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抄録

維持透析療法において,透析患者の高Ca血症は骨ミネラル代謝異常の一部であり,高頻度に認められる.また,それにより血管石灰化,ひいては,心血管イベントをひき起こす.透析患者における高Ca血症の原因として,Ca製剤の過剰投与,活性化ビタミンDの過剰投与,高度の二次性副甲状腺機能亢進症などを第一に考え治療を行った.しかし,これらの治療に抵抗性の高Ca血症を呈し,精査を行い,サルコイドーシスの診断に至った維持透析の症例を経験したので報告する.症例は64歳,男性.2004年,多発性嚢胞腎からの慢性腎不全にて維持透析導入.二次性副甲状腺機能亢進症に対して,沈降炭酸Ca,塩酸セベラマー,アルファカルシドールを内服し,コントロール良好であった.2006年夏頃より高Ca血症,intact PTHの低下を認め,アルファカルシドールを中止したが,2007年5月頃よりCa 11.8mg/dLと上昇し,沈降炭酸Ca減量中止とした.8月にはCa 12.4mg/dLとなり,低Ca透析に変更,エルカトニン投与を開始した.12月両側肺門リンパ節の腫脹,ツベルクリン反応陰性,Ga集積像陽性,気管支肺胞洗浄にて総細胞数,リンパ球の増加,CD4/CD8比の上昇を認め,サルコイドーシスの診断に至り,副腎皮質ステロイド治療を開始し,すみやかにCa値は正常化した.維持透析患者の高Ca血症はミネラル代謝異常の一部であるが,治療抵抗性の場合,鑑別診断としてサルコイドーシスも考慮すべきである.

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© 2011 一般社団法人 日本透析医学会
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