日本透析医学会雑誌
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原著
糖尿病合併血液透析患者におけるアログリプチン安息香酸塩の効果
中村 裕也清水 辰雄藤田 喜一郎井上 通泰後藤 博道後藤 善和稲垣 昌博小口 勝司
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2011 年 45 巻 1 号 p. 49-57

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抄録
糖尿病合併血液透析患者におけるアログリプチン安息香酸塩(以下アログリプチン)の効果を検討した.対象は2010年9月に埼友草加病院で血液透析治療をしている患者381例中,ヘモグロビンA1c(以下HbA1c)≧6.1%かつグリコアルブミン(以下GA)≧20%で,食事療法や運動療法では血糖コントロールが不良な2型糖尿病患者16名を対象とした.インスリン注射や経口糖尿病薬の内服をしている患者はすべて除外された.年齢は62.5±9.2歳で,男性は13名,女性は3名だった.アログリプチンは1日1回6.25mgを内服とした.アログリプチンの投薬前後のHbA1c,GA,血糖値,インスリン値,C-peptide immunoreactivity値,グルカゴン値,活性型グルカゴン様ペプチド-1(以下GLP-1)値を測定した.採血はすべて透析開始前に行われた.検査値はWilcoxon signed-rank testを用いて解析された.HbA1cおよびGAは,投薬開始8週以降で投薬開始前とくらべて有意に低下した(p<0.05).HbA1cは投薬開始前が6.7±0.2%(平均±標準誤差)で,投薬開始後40週で5.6±0.2%に低下した.GAは投薬開始前が22.5±0.7%で,投薬開始後40週で19.7±0.5%に低下した.40週の観察期間で,16名中13名(81.3%)の患者がHbA1c<6.1%かつGA<20%を達成した.アログリプチン投薬前の活性型GLP-1値は8.9±5.7pmol/Lで,アログリプチン投薬前後で約2倍上昇した(p<0.05).アログリプチン内服による有害事象は,薬疹が1名だったが低血糖はいなかった.本研究では,糖尿病治療の選択肢が少ない血液透析患者において,新規治療戦略の一つとして期待されるアログリプチン(DPP-4阻害薬)の有効性を示唆することができた.
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© 2011 一般社団法人 日本透析医学会
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