抄録
透析歴30年以上の慢性透析患者の日常生活活動度(activities of daily living:ADL)に関する調査は,これまでほとんど行われていない.そこで当院における透析歴30年以上の患者26名(男性18名,女性8名)について,透析歴30年目のADL,背景,および臨床検査値について調査したところ,以下のことが分かった.透析歴30年目の慢性透析患者は,1)女性の方が,男性よりもADLが有意に高かった(p<0.001).2)「終日就床」の患者は,いなかった.3)冠動脈大動脈バイパス移植術,または経皮的冠動脈形成術の既往のある患者は,いなかった.4)原疾患は1名がSLEで,25名が慢性腎炎由来で,糖尿病性腎症由来の患者は,いなかった.5)透析導入時年齢,dry weight,body mass index,血清アルブミン,hematocrit,透析前尿素窒素,β2-マイクログロブリン,二次性副甲状腺機能亢進症手術の既往,手根管症候群手術の既往,については,ADLとの関連性はみられなかった.6)ADLと透析歴30年目のkt/vは,関連性がみられた(p<0.05).