日本透析医学会雑誌
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症例報告
コレステロール結晶塞栓症で透析導入になり,肺血栓塞栓症により死亡した1剖検例
中小路 やよい石黒 裕章草川 由佳川島 朋子滝沢 利一尾松 睦子諸星 利男
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2011 年 45 巻 1 号 p. 79-85

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抄録
症例は,肺高血圧症,糖尿病,高血圧,高脂血症,陳旧性心筋梗塞の既往と喫煙歴のある76歳男性.一過性意識障害が生じ,肺血栓塞栓症(pulmomary embolism:PE)の診断で下大静脈フィルターの留置,抗血栓療法,抗凝固療法(ワルファリン3mg/日など)を施行した.入院時Cre 1.1mg/dLから第19病日Cre 7.7mg/dLまで悪化した.同時に全身に掻痒を伴う紅斑,足趾に紫斑を認め,皮膚生検でコレステロール結晶塞栓症(cholesterol crystal embolism:CCE)と診断し,PSL 40mg/日内服,LDL吸着療法を行った.腎機能は改善傾向となり,PSLは漸減していった.その後,食欲不振,再び腎機能の悪化を認め,尿毒症と考えて第48病日から血液透析を導入した.皮下出血が多く,厳格な抗凝固療法は行えなかった.第317病日胸痛が出現し,精査でPEの再発と診断し,下大静脈フィルターを留置した.CCEの既往があるため,血栓溶解は行わず,ヘパリン20,000単位/日投与,ワルファリン2mg/日内服に増量したが,その翌日PEにより死亡した.剖検では肺動脈には器質化した血栓が多数存在し,右上葉枝に比較的新しい血栓を認めた.腎小葉間動脈内にコレステロール結晶(cholesterol crystal:CC)を認め,増生した線維性結合組織が血管内腔を閉塞していた.その他,全身の表皮下・肝・脾・両側副腎・膵にもCCを認めた.本症例では肺塞栓に対し下大静脈フィルターを留置後,血栓溶解療法,抗凝固療法を行った結果,CCEの発症へとつながった.慢性肺塞栓に対しては十分なワルファリン投与ができず,最終的には肺塞栓により死亡に至った.治療法が相反するCCEと肺塞栓を合併し,治療に難渋した1例である.
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© 2011 一般社団法人 日本透析医学会
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