日本透析医学会雑誌
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症例報告
ABO血液型不適合・同種造血幹細胞移植後にpassenger lymphocyte syndromeを併発し,急性腎不全に至った症例
原 正樹森戸 卓大橋 一輝土谷 健新田 孝作安藤 稔
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2012 年 45 巻 3 号 p. 273-279

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抄録

症例:53歳,男性.1990年3月に骨髄穿刺にて骨髄異形成症候群と診断.1998年10月より末梢血中に骨髄芽球が出現し,当院血液内科で定期的なフォローアップを受けていた.2008年2月に造血幹細胞移植を目的に入院となった.ドナーは血液型A型,レシピエントは血液型B型,HLA型はフルマッチした非血縁間ABO血液型不適合・同種骨髄移植が施行された.移植後赤血球数の回復が不良であり,day9の検査で血清LDHと総ビリルビン値の上昇,直接クームス試験陽性,抗B抗体陽性であったことから,採取された幹細胞に混入したドナー・リンパ球が抗B抗体を産生することにより発症する溶血症候群(passenger lymphocyte syndrome:PLS)と診断した.Day10に乏尿となり,潜血反応強陽性,血清クレアチニン(Cr)濃度の上昇(2.8mg/dL)を認めたことから,血色素尿症による急性腎障害(acute kidney injury:AKI)と考え,直ちに抗B抗体除去およびAKI治療目的で単純血漿交換(plasma exchange:PE)と血液透析療法(hemodialysis:HD)を開始した.PEを3回,HDを計4回施行したところで抗B抗体価は低下し始め,腎機能データも回復傾向を示し,day38に血液浄化療法を離脱できた.本例はABO血液型不適合造血幹細胞移植後に重度のPLSが合併し,血色素尿症によるAKIに至った症例である.ABO血液型不適合造血幹細胞移植後のPLSからAKIに至った症例の報告はきわめて少ないため,その臨床病像の特徴について報告する.

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© 2012 一般社団法人 日本透析医学会
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