日本透析医学会雑誌
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45 巻, 3 号
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第56回日本透析医学会シンポジウムより『要介護透析患者の医療連携』
原著
  • 鎌田 正, 朱 星華, 落合 美由希, 藤澤 奈央, 門屋 佑子, 八城 正知
    2012 年 45 巻 3 号 p. 241-246
    発行日: 2012/03/28
    公開日: 2012/04/13
    ジャーナル フリー
    シャントなどのバスキュラーアクセスが確立していない患者に対して血液浄化療法が必要になった場合,ダブルルーメンカテーテルを中心静脈に留置して治療を開始することが一般的であるが,この方法は血流感染症・血栓形成など重篤な合併症のリスクを伴う.われわれは各種血液浄化法が必要となった症例に対し,バスキュラーアクセスが確立されるか血液浄化療法を離脱するかいずれの状況まで血液浄化のたびに超音波ガイド下で大腿静脈に透析針を挿入することで,ダブルルーメンカテーテルを使用することなく血液浄化を施行した.2008年6月から2011年8月まで当院で超音波ガイド下大腿静脈反復穿刺法にて血液浄化法を施行した16例を対象とした.基礎疾患は慢性腎不全が9例(糖尿病性腎症5例,腎硬化症2例,慢性糸球体腎炎1例,原因不明1例),膠原病が3例,ネフローゼ症候群が2例(微小変化群1例,原因不明1例),急性腎不全とM蛋白血症に伴う多発ニューロパチーが各1例であった.ステロイド・免疫抑制剤を投与中の患者は16例中6例であった.血液浄化法の内訳は血液透析が11例,二重濾過血漿交換・単純血漿交換併用が1例,二重濾過血漿交換単独が2例,ECUMが1例とLDL吸着が各1例であった.16ゲージの透析用長針を用い,穿刺に際して穿刺針に生じる音響陰影に着目し,積極的に超音波プローブを走査することで針先位置を特定した.大腿静脈は脱血側とし,返血側は四肢の皮静脈に通常の方法で穿刺した.16例に対し総計156回(1~48回,平均9.8回),本法による血液浄化を施行したが,新たな血流感染症や血腫形成は認めなかった.大腿動脈には分枝が多く解剖学的知識や触診に基づいた大腿静脈反復穿刺法では一定の確率で動脈性出血を起こしうるが,本法により安全・確実な血液浄化療法が施行可能であった.ダブルルーメンカテーテルの留置を避けたい場合に本法は一時的バスキュラーアクセスとして有用と思われた.
  • 平松 英樹, 林 裕樹, 水野 正司, 鈴木 康弘, 戸田 晋, 伊藤 功, 丸山 彰一, 伊藤 恭彦, 松尾 清一
    2012 年 45 巻 3 号 p. 247-253
    発行日: 2012/03/28
    公開日: 2012/04/13
    ジャーナル フリー
    腹膜透析(peritoneal dialysis:PD)患者において遺伝子組換えヒトエリスロポエチン(recombinant human erythropoietin:rHuEPO)投与量は,最大24,000単位/月(12,000単位/2週または6,000単位/週)であるが,十分な貧血改善効果が得られない症例もみられる.われわれは,当院PD患者46名を対象とし,rHuEPOによりヘモグロビン値(Hb値)が,10g/dL以上に到達できなかった赤血球造血刺激因子製剤(erythropoiesis stimulation agent:ESA)療法低反応性PD患者8名について,Darbepoetin Alfa(DA)投与の効果を検討しDA投与が必要であった患者群(DA群)は,DA非投与の患者群と比べると腹膜透析歴が有意に長期であった.また,DA群で残腎機能は有意に低下しており,中分子量物質除去の指標であるβ2-ミクログロブリン値(β2-MG)は高値であった.また,炎症の指標であるCRP値は,DA群で有意に高値であった.両群のフェリチン値に差はなかった.DA群では,rHuEPO投与からDAへ変更したことにより,投与開始時のHb値9.1±0.8g/dL(平均±標準偏差)から投与18週後にHb値11.0±0.8g/dLへ有意に改善し,また,長期投与により全例が目標Hb値の11g/dL以上となった.なお,DA投与量は,投与開始時67.5±19.8μg/回/2週から100±18.5μg/回/2週(投与18週)への増量が必要であった.rHuEPOで十分な貧血改善が得られないESA療法低反応性PD患者においても高用量のDA投与により,Hb値の改善が全例可能であったことより,当院のESA低反応症例は,ESA投与量の絶対量不足が原因と考えられた.
  • 宮田 誠治, 齋木 豊徳
    2012 年 45 巻 3 号 p. 255-259
    発行日: 2012/03/28
    公開日: 2012/04/13
    ジャーナル フリー
    透析患者は年々増加の一途を辿っており,透析療法の質の向上とQOLの向上が求められている.われわれは,透析中に発生する合併症の一つである穿刺側上肢の疼痛を緩和させる手段として透析液温度に着目した.まず,透析液温度の設定により体外循環中の血液温度がどの程度変化しているのかを検討した.次に透析液温度の設定を3週間ごとのクロスオーバーにて変化させ,透析液温度が穿刺側上肢の疼痛に与える影響について検討した.ダイアライザー通過後の血液温度は,透析液温度が36.0℃以下では低下し,36.5℃では不変,37.0℃では上昇していた.次に穿刺側上肢の疼痛は,透析液温度が36.5℃以上で有意に少なく,処置回数は透析液温度が36.0℃以上で有意に少なかった.本検討から,透析液温度の設定は,透析中に生じる穿刺側上肢の疼痛を緩和できる有効な手段であると考えられた.
症例報告
  • 荒木 崇志, 村上 円人, 佐藤 真理子, 神戸 香織, 田村 謙太郎, 三浦 弘志
    2012 年 45 巻 3 号 p. 261-266
    発行日: 2012/03/28
    公開日: 2012/04/13
    ジャーナル フリー
    症例は52歳,男性.糖尿病性腎症による慢性腎不全のため腹膜透析施行中.腹満感,排液不良で外来受診した際の腹部CTで塊状となった腸間膜脂肪織の炎症像を認め,上腸間膜脂肪織炎による排液不良と診断した.上腸間膜脂肪織炎の病因は不明であり,報告例も少ないが,腹膜透析患者においては排液障害の原因となることもあると考えられた.
  • 小島 史子, 上田 美緒, 斎藤 まどか, 田中 好子, 唐鎌 優子, 輿石 剛, 新田 孝作, 秋葉 隆
    2012 年 45 巻 3 号 p. 267-272
    発行日: 2012/03/28
    公開日: 2012/04/13
    ジャーナル フリー
    症例は68歳,男性.2000年4月糖尿病性腎不全にて血液透析導入.1961年胃潰瘍にて胃亜全摘の既往あり(輸血施行).2004年9月頃より便失禁,うつ症状が出現.2010年になり小刻み歩行や食べこぼしなどの症状を認めるようになった.大酒家であること,C型肝炎ウィルスキャリアであることから肝機能障害を疑い,2010年8月3日血中アンモニア濃度を測定したところ232μg/dLと上昇を認めた.血小板数,凝固系は正常であり,腹部エコー,CTでも肝硬変所見は認めなかった.一方,CTにて拡張した脾静脈を認め,脾静脈から左精巣静脈を経て下大静脈へ至る短絡を認めた.血管造影で短絡が確認され,門脈大循環系短絡による高アンモニア血症と診断された.高アンモニア血症の原因として,肝硬変は否定された.分枝鎖アミノ酸製剤の点滴後も血中アンモニア値の充分な低下を認めなかったため,B-RTOを施行した.術後血中アンモニア値は正常化し,現在9か月を経過しているが,再発を認めず経過良好である.
  • 原 正樹, 森戸 卓, 大橋 一輝, 土谷 健, 新田 孝作, 安藤 稔
    2012 年 45 巻 3 号 p. 273-279
    発行日: 2012/03/28
    公開日: 2012/04/13
    ジャーナル フリー
    症例:53歳,男性.1990年3月に骨髄穿刺にて骨髄異形成症候群と診断.1998年10月より末梢血中に骨髄芽球が出現し,当院血液内科で定期的なフォローアップを受けていた.2008年2月に造血幹細胞移植を目的に入院となった.ドナーは血液型A型,レシピエントは血液型B型,HLA型はフルマッチした非血縁間ABO血液型不適合・同種骨髄移植が施行された.移植後赤血球数の回復が不良であり,day9の検査で血清LDHと総ビリルビン値の上昇,直接クームス試験陽性,抗B抗体陽性であったことから,採取された幹細胞に混入したドナー・リンパ球が抗B抗体を産生することにより発症する溶血症候群(passenger lymphocyte syndrome:PLS)と診断した.Day10に乏尿となり,潜血反応強陽性,血清クレアチニン(Cr)濃度の上昇(2.8mg/dL)を認めたことから,血色素尿症による急性腎障害(acute kidney injury:AKI)と考え,直ちに抗B抗体除去およびAKI治療目的で単純血漿交換(plasma exchange:PE)と血液透析療法(hemodialysis:HD)を開始した.PEを3回,HDを計4回施行したところで抗B抗体価は低下し始め,腎機能データも回復傾向を示し,day38に血液浄化療法を離脱できた.本例はABO血液型不適合造血幹細胞移植後に重度のPLSが合併し,血色素尿症によるAKIに至った症例である.ABO血液型不適合造血幹細胞移植後のPLSからAKIに至った症例の報告はきわめて少ないため,その臨床病像の特徴について報告する.
Letter to the Editor
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