日本透析医学会雑誌
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原著
シナカルセト塩酸塩と活性型ビタミンD静注の併用療法による二次性副甲状腺機能亢進症の長期管理の検討
大田 和道山本 洋之甲藤 和伸池辺 弥夏池辺 宗三人松下 和弘杉田 治戦 泰和湯浅 健司寺尾 尚民
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2012 年 45 巻 5 号 p. 393-399

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抄録

目的:カルシウム(Ca)受容体作動薬であるシナカルセト塩酸塩(シナカルセト)は,静注ビタミンD(VD)製剤と異なる作用機序でPTHの分泌を抑制することから,二次性副甲状腺機能亢進症(SHPT)例に対する新たな治療選択肢として期待される.今回,静注VD製剤にて管理不良のSHPT症例に対し,シナカルセトと静注VD製剤の併用療法の長期効果を検討した.対象と方法:静注VD製剤投与下にて管理不良だったSHPT例43名に対し,シナカルセトとVD製剤の併用療法を開始した.シナカルセトの併用は1日25mgから開始し,その後iPTH,補正Ca値や血清P値が適切に管理されるよう投与量を調整した.結果:iPTHは,シナカルセト併用開始時は774.5±418.5pg/mLと高値であったが,併用開始から低下し,24か月経過後も241.0±132.3pg/mLと抑制効果は持続していた.iPTHをJSDTの管理目標値内に低下させることが可能であった症例数は,併用開始後14か月の時点では24名(55.9%)であり,その後17名(39.5%)が試験終了時まで管理目標値で維持された.さらに,全例がiPTH 400pg/mL未満にて管理することが可能であり,副甲状腺インターベンションを実施することなく,SHPTの内科的管理が可能であった.また,JSDTのiPTH管理目標値を逸脱した症例では,体積300mm3以上の腫大副甲状腺数が有意に多く,また,副甲状腺総体積も有意に大きい傾向が認められた.しかし,一方では,結節性過形成の可能性が高いとされる体積500mm3以上の腫大副甲状腺を有する症例においても,12名中6名がiPTHをJSDTの管理目標値内に維持可能であった.結論:シナカルセトと静注VD製剤の併用療法により,VD抵抗性のSHPT例であっても,iPTHを低下させ,24か月の間,副甲状腺インターベンションの適応であるiPTH 400pg/mLを超えることなく管理可能であった.シナカルセトとVD製剤の併用療法は,従来の内科的治療に抵抗性を示すとされる結節性過形成を呈するSHPT症例に対しても,一定の効果がある可能性が示された.

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© 2012 一般社団法人 日本透析医学会
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