日本透析医学会雑誌
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症例報告
遷延する好酸球増多症により糞線虫を診断しえた血液透析患者の1例
安達 崇之町田 慎治佐々木 彰上原 圭太関谷 秀介安田 隆柴垣 有吾
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2015 年 48 巻 11 号 p. 657-662

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抄録

症例は80歳女性. 糖尿病合併末期腎不全にて8年前より維持透析中の患者であり, 夜間に転倒, 歩行困難となったため, 当院救命センターへ搬送となった. 重度な外傷などはないものの, 炎症反応, 軽度意識障害が持続するため, 精査目的に腎臓内科へ転科となった. 各種検査で, 細菌・ウィルス感染症, 膠原病, 悪性腫瘍は否定的であった. 病歴を振り返ると, 透析導入初期より好酸球増多症を認め, 薬剤や透析機器に対するアレルギー反応が疑われ, 調整が行われていたが改善はなく, 特発性好酸球増多症との診断で, ステロイドが投与されていた. 今回の入院時も好酸球増多症が持続していたため, 詳細な鑑別を行い, その一環として寄生虫疾患の検索を施行し, 便より糞線虫を検出した. 呼吸器・消化器含む, 糞線虫症による臓器障害の所見は否定的であった. 透析患者における原因不明の好酸球増多時には, 頻発地域でなくても寄生虫疾患の除外が必要と考えられた.

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© 2015 一般社団法人 日本透析医学会
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