日本透析医学会雑誌
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48 巻, 11 号
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原著
  • 増野 雄一, 三好 麻希, 前田 明信, 福本 和生, 髙石 義浩
    2015 年 48 巻 11 号 p. 627-634
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/27
    ジャーナル フリー
    慢性維持透析患者の高齢化, 透析期間の長期化が進んでおり, 透析患者の健康状態の維持・向上させるための一つの手段として運動療法の重要性が高まっている. 一般的な血液透析の場合, 透析日は時間的制約や透析後の疲労感により身体活動量が低下するため, 透析施行中の運動療法の必要性は高い. 透析施行中の自転車エルゴメーターやゴムチューブなど運動器具を用いた運動療法により透析患者の運動機能やquality of life (QOL) が向上すると報告されている. 本研究では当院外来血液透析患者23名を対象とし, 運動器具を用いない簡便な方法で下肢の筋力強化運動をセルフトレーニングにて12週間実施し, 移動能力・QOLの効果を検討した. 歩行・立ち上がり能力, 膝伸展筋力の向上など移動能力が改善し, 日常役割機能の向上やQOLの改善を認めた. われわれが施行した運動療法においても移動能力やQOLの向上が示唆された.
  • 河野 健一, 矢部 広樹, 森山 善文, 森 敏彦, 田岡 正宏, 佐藤 隆
    2015 年 48 巻 11 号 p. 635-641
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/27
    ジャーナル フリー
    血液透析患者の転倒リスクを予測するうえで有用な指標を明らかにする. 歩行可能な血液透析患者123例を対象に転倒の発生を主要アウトカムとする1年間の前向きコホートを実施した. 身体パフォーマンスに関する指標であるshort physical performance battery (SPPB), 筋力, 筋肉量に加え, 栄養状態の指標や透析に関連する指標の転倒に対するハザード比を算出した. 観察期間内に38名 (31%) が転倒し, 透析関連低血圧 (intra-dialytic hypotension : IDH) が独立した危険因子として抽出された (HR=2.66, p=0.01, Log rank test p=0.002). また, SPPB 7点以下は11点以上と比較して有意に転倒のリスクが高かった (HR=2.41, p=0.02, Log rank test p=0.021). IDHやSPPBの低下は透析患者の転倒リスクを予測するうえで有用な指標となることが明らかとなった.
  • 前野 七門, 中西 啓介, 大町 和, 太田 隆祐, 太田 なおみ
    2015 年 48 巻 11 号 p. 643-649
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/27
    ジャーナル フリー
    われわれは濃度希釈法による動静脈瘻 (AVF) 推定血流量 (eAVF-FV) と, フロープロファイル法 (FP法) およびパルスドプラ法 (PD法) による上腕動脈推定血流量 (eBA-FV) の測定値を比較検討した. 維持血液透析17例に対し透析前にアロカメディカル社ProSoundα7 (以下A7), GEヘルスケア社LOGIQ Book XP (以下LB) により, eBA-FVおよびAVF血流途絶下のAVF側eBA-FV (pBA-FV), AVF反対側肢のeBA-FV (cBA-FV) を, さらに透析中Transonic Systems社HD02により濃度希釈法でeAVF-FVを各3回測定し, 再現性, 平均値, 誤差率 (誤差率=[|eBA-FV-eAVF-FV|]/eAVF-FV×100) を検討した. eAVF-FVは155~1,045mL/min (566±322mL/min) でA7-FP法とA7-PD法のeBA-FVと有意差はなく, LB-PD法は有意に高値だった. 誤差率はA7-FP法で39±42%, A7-PD法で47±45%で両者間に有意差はなく, LB-PDは83±59%で他2者より有意に大きく (p=0.025), pBA-FV, cPA-FV補正による有意の変化はなかった. 超音波による血流量測定値は, 誤差率を勘案すれば臨床的に有用と思われる.
症例報告
  • 田中 久貴, 笛木 孝明, 大城 義之
    2015 年 48 巻 11 号 p. 651-655
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/27
    ジャーナル フリー
    慢性維持透析患者に発生する腎細胞癌 (透析腎癌) は, 透析患者において生命予後を決定する重要な疾患の一つである. しかし, 長期透析患者において好発する慢性囊胞性腎疾患 (acquired cystic disease of the kidney : ACDK) に合併する腎癌の診断は苦慮することも多く, 腰痛, 血尿などの臨床症状だけでは早期発見が困難で, 定期的に画像診断を行うことが必要とされている. 今回われわれは腰椎転移による腰痛が初発症状で発症した, 長期透析患者の腎癌の診断においてPET-CT検査が有効であった症例を経験したので報告する.
  • 安達 崇之, 町田 慎治, 佐々木 彰, 上原 圭太, 関谷 秀介, 安田 隆, 柴垣 有吾
    2015 年 48 巻 11 号 p. 657-662
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/27
    ジャーナル フリー
    症例は80歳女性. 糖尿病合併末期腎不全にて8年前より維持透析中の患者であり, 夜間に転倒, 歩行困難となったため, 当院救命センターへ搬送となった. 重度な外傷などはないものの, 炎症反応, 軽度意識障害が持続するため, 精査目的に腎臓内科へ転科となった. 各種検査で, 細菌・ウィルス感染症, 膠原病, 悪性腫瘍は否定的であった. 病歴を振り返ると, 透析導入初期より好酸球増多症を認め, 薬剤や透析機器に対するアレルギー反応が疑われ, 調整が行われていたが改善はなく, 特発性好酸球増多症との診断で, ステロイドが投与されていた. 今回の入院時も好酸球増多症が持続していたため, 詳細な鑑別を行い, その一環として寄生虫疾患の検索を施行し, 便より糞線虫を検出した. 呼吸器・消化器含む, 糞線虫症による臓器障害の所見は否定的であった. 透析患者における原因不明の好酸球増多時には, 頻発地域でなくても寄生虫疾患の除外が必要と考えられた.
  • 内木場 紗奈, 吉藤 歩, 細谷 幸司, 二木 功治, 田島 敬也, 小松 素明, 日比野 祐香, 立松 覚, 竜崎 崇和
    2015 年 48 巻 11 号 p. 663-668
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/27
    ジャーナル フリー
    多発性囊胞腎の肝囊胞感染は通常, 経胆道感染であり, 腸内細菌および嫌気性菌が原因菌となることが多い. しかし, 今回われわれは, 多発性囊胞腎患者の感染性肝囊胞において, 通常の一般培養では検出できなかったが, 16S rRNA法により口腔内常在レンサ球菌の一種であるStreptococcus gordoniiが原因菌であると判明した症例を経験した. 早期の経皮的ドレナージおよび8週間の経静脈的抗菌薬投与にて予後良好な経過を得た. また, 本患者では, 口腔内レンサ球菌が検出された原因として, 齲歯などの口腔内衛生環境の問題や穿刺時の感染予防策などの問題があった. 多発性囊胞腎患者の口腔内衛生および透析管理を再考する示唆に富む症例と考え, 報告する.
  • 森澤 紀彦, 山本 泉, 川邊 万佑子, 岡林 佑典, 吉岡 友基, 中村 真未, 萬 昂士, 勝俣 陽貴, 勝馬 愛, 高橋 康人, 中田 ...
    2015 年 48 巻 11 号 p. 669-675
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/27
    ジャーナル フリー
    非閉塞性腸管虚血症 (non-occlusive mesenteric ischemia : NOMI) は, 腸間膜動静脈に閉塞や血栓を認めない腸管虚血症である. 血液透析 (HD) 患者におけるNOMI発症率はまれだが, 非透析患者に比べて100倍程度増加し, かつ, 致死率が極めて高く, 迅速な診断と加療を要する. 血圧低下を契機にNOMIを発症したHD2症例を経験した. 症例1はHD歴2か月の52歳男性で低左心機能に伴う低血圧を契機に発症, 症例2はHD歴5年の88歳女性で出血に伴う低血圧を契機に発症した. NOMI発症誘因として全身の低灌流状態に伴う血管攣縮が示唆されている. またHD患者のprofileとNOMIのrisk factorは酷似している. NOMIに特異的症状や検査所見はなく, HD中の血圧低下に腹痛を併発した場合にNOMIを念頭におくことが重要であり, 簡便に施行できるdynamic造影CT検査が診断に有用である. NOMIは予後不良であり, 発症予防として, 透析間体重増加の管理などの患者教育およびHD中の血圧管理が重要である.
  • 坂本 譲, 今 裕史, 岩崎 沙理, 正司 裕隆, 谷 道夫, 小柳 要, 赤坂 嘉宣
    2015 年 48 巻 11 号 p. 677-682
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/27
    ジャーナル フリー
    症例は71歳, 男性. 糖尿病性腎症にて血液透析を導入し, 以後週3回の外来維持透析を施行していた. 前腕内シャント閉塞に対して対側前腕に内シャントを再造設したが, 再造設後4日目から37°C台の発熱を認めた. 各種抗生剤を投与するも解熱せず, CTを施行し左頸部および傍大動脈リンパ節の腫大を認め, 採血にてIL-2レセプター値の上昇も認めたことから, 悪性リンパ腫を疑い左頸部リンパ節生検を施行した. 摘出標本は結核菌PCR陽性であり, 病理組織学的検査所見では乾酪性類上皮肉芽腫を認めたため結核性リンパ節炎と診断した. 抗結核薬4剤併用の治療を開始し症状は軽快し, 治療開始後約1年目のCTでは明らかな再燃を認めていない. 血液透析患者では症状が典型的でないこともあり, 不明熱の原因として結核症を常に念頭におくべきである.
委員会報告
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