日本透析医学会雑誌
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症例報告
上腸間膜動脈の硬化, 狭窄を伴う透析患者の急性小腸出血を動脈塞栓術で止血した1例
松久 忠史舘山 美樹坂本 和也櫛田 隆久熊谷 文昭
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2015 年 48 巻 12 号 p. 729-734

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抄録
症例は61歳の女性. IgA腎症による慢性腎不全で血液透析を施行している. 急性出血性胆囊炎に対する胆囊摘出術後の経過中に下血を認め, ダイナミックCTで急性小腸出血と診断した. 腹部血管造影では上腸間膜動脈根部が硬化, 狭窄しているため造影に用いた4-Frコブラカテーテルを十分に挿入できなかった. 小腸に造影剤の漏出像を認めた. コブラカテーテルの内腔を通して2.8-Frマイクロカテーテルを進め直動脈の選択的塞栓術を試みたが, マイクロカテーテルが出血点に近接するとコブラカテーテルが上腸間膜動脈から逸脱しマイクロカテーテルも後退するため可及的選択的位置から多孔性ゼラチン粒を用いて塞栓した. 術後は再出血や腸管虚血をきたすことなく経過し退院した. 動脈硬化が原因で腹部血管造影や動脈塞栓術における手技に制約を伴ったが, 透析患者に生じた急性小腸出血を的確に診断し適切に止血することができた.
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© 2015 一般社団法人 日本透析医学会
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