抄録
症例は56歳, 女性. 20年の透析歴. CTで3cmの右腎腫瘍および右恥骨腫瘍を指摘. 恥骨腫瘍の針生検により肉腫様腎細胞癌が検出され右腎細胞癌の転移と診断. 入院40日目に死亡. 剖検で右腎に肉腫様部を伴う乳頭状腎細胞癌と肝, 副腎, 椎骨, 恥骨転移を確認. 国内での維持透析患者の肉腫様腎細胞癌は, われわれが調べ得た限り詳細の明らかなものは23例であった. 集計の結果, 透析歴10年以上に多く長期透析との関連が疑われた. 腫瘍径は小型で, 腫瘍径と透析年数には相関がなく腫瘍径と転移率, 癌死亡率にも明らかな関係はみられなかった. 転移は肝, 骨, 肺に多く血行性と思われる. 肉腫様腎細胞癌は診断が困難なうえに悪性度が高く極めて予後不良である. 透析患者の肉腫様腎細胞癌では手術適応には大きさよりも透析期間が重要と考えられ, 10年以上の長期透析患者では腫瘍径が小さくとも手術を考慮すべきである.