抄録
先天性血友病A患者に対し, 抗凝固薬や第Ⅷ因子補充の調整を行い, 無事に血液透析導入を行った症例を経験したので報告する. 症例は25歳男性. 3歳時にAlport症候群と診断され, その後徐々に腎機能が低下したため8歳時より腹膜透析導入となった. 9歳時に生体腎移植を施行, 腹膜透析を離脱した. 19歳時鼻出血が続き, 血友病の家族歴, 第Ⅷ因子活性トラフ値の低下があることから血友病Aと診断された. 第Ⅷ因子活性トラフ値は10%以上保たれており軽症血友病であった. 腎機能は慢性拒絶反応により移植後徐々に低下し維持透析は不可避と考え21歳時左内シャント造設し3か月後に血液透析導入となった. 導入時抗凝固薬や第Ⅷ因子補充に関して調整を行い, 透析中は最終的に抗凝固薬なし, 透析終了時第Ⅷ因子製剤500単位投与で安定した透析が継続可能となった. 現在導入後4年となるが, 重篤な出血あるいは凝固トラブルはなく血液透析を継続できている.