日本透析医学会雑誌
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症例報告
結核感染による高カルシウム血症が疑われ, 診断と治療効果の判定に1,25(OH)2D/i-PTH比が有用であった維持血液透析患者の1例
劉 和幸鹿野 勉西村 昌泰西岡 克章紀田 康雄
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2016 年 49 巻 5 号 p. 343-350

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抄録

症例は維持血液透析を受けている84歳男性. 2011年2月頃から血清Ca値が次第に上昇し, 2011年10月には補正血清Ca値13.1mg/dLとなった. 痰や胃液から結核菌は検出されなかったが, FDG-PETで肺門・縦隔リンパ節に集積と腫脹を認め, QuantiFERON® TB-2G検査値が3.04IU/mLと高値であった. さらに1,25(OH)2D/i-PTH比が6.75pg/pgと高値であったため, 結核感染による高Ca血症を疑い, 抗結核薬による治療を開始した. 治療開始7か月後には補正血清Ca 8.7mg/dLに, 1,25(OH)2D/i-PTH比は0.04pg/pgに低下し, 同部位のリンパ節腫脹は縮小した. 透析患者では一般に, ビタミンDの活性化障害による1,25(OH)2D低値と二次性副甲状腺機能亢進によるi-PTH高値のため, 1,25(OH)2D/i-PTH比は低値となるが, 結核などの肉芽腫性疾患では1,25(OH)2Dの腎外産生の亢進により, その比は上昇する. 1,25(OH)2D/i-PTH比は, 高Ca血症を伴う血液透析患者の結核の診断ならびに治療効果の指標として有用であった.

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© 2016 一般社団法人 日本透析医学会
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