抄録
72歳男性, 腎硬化症による末期腎不全のためCAPDを施行していた. 導入15か月後に水様性下痢に続いてCAPD排液の混濁があり外来を受診. 排液白血球数増多を認めCAPD腹膜炎として抗生剤治療開始. 培養陰性で速やかに排液混濁が消失したため抗生剤投与は10日間で終了し退院とした. 退院当日に再度排液混濁を認め再びCAPD腹膜炎として入院. CAPD排液の培養からParacoccus yeeiが同定され, 薬剤感受性に従いCAZ 1gを21日間腹腔内投与した. 抗生剤終了後も排液混濁は認めず退院とした. Paracoccus yeeiはグラム陰性の球菌ないしは球桿菌で2003年に登録された新種である. CAPD腹膜炎の起炎菌としてはきわめてまれであるが, 菌種を同定し感受性のある薬剤を投与したことにより良好な結果を得ることができた.