抄録
89歳女性. 201X年12月, 急性腎盂腎炎, 敗血症性ショックのため当院紹介. 同日より心房細動の合併に対しヘパリンを開始. 腎不全急性増悪のため右大腿静脈に透析用カテーテルを留置し翌日から血液透析を開始した. 第3病日, カテーテル脱血不良のため右内頸静脈に再留置. 第4病日, カテーテル閉塞. 第11病日, 下肢血栓症のため下大静脈フィルターを留置. 血小板は13.4万/μLから6.1万/μLへ低下した. 経過よりⅡ型ヘパリン起因性血小板減少症 (HIT) を疑い, ヘパリンを中止しアルガトロバンを開始した. しかし, バスキュラーアクセスの確保が困難となり, 第25病日, 腹膜透析へ移行した. 抗血小板第4因子/ヘパリン複合体抗体は1.3U/mLで陽性. ヘパリン開始後4日以内の血栓傾向や血小板減少は, 非典型的であり, 急速発症型または特発性の可能性について検討する必要がある.