日本透析医学会雑誌
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症例報告
人工血管挿入後, 過大シャントは呈さずに痙攣発作を生じた血液透析患者の1例 : 動静脈シャントによる臓器虚血を考察する
若林 奈津子武田 真一菅生 太朗清水 俊洋黒澤 明小森 さと子伊澤 佐世子木村 貴明秋元 哲齋藤 修武藤 重明八木澤 隆長田 太助
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2016 年 49 巻 6 号 p. 419-423

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抄録

血液透析のための動静脈シャントは非生理的な血行動態であり, ときに諸臓器への悪影響を生じる. 症例は70歳女性. 糖尿病性腎不全のため20XX年3月に自己血管内シャントを造設, 5月より血液透析が開始されたが, 脱血不良のため8月に人工血管を挿入した. ところが, 透析中に全身の間欠的な痙攣が出現するようになり, 種々画像検査では両側内頸動脈閉塞および左椎骨動脈解離を認めた. 内シャント後に潜在的な盗血を生じ, 血液透析により脳血流障害が助長されたと考え, 直ちに人工血管を閉鎖した. 以降は中心静脈カテーテルを用いて血液透析を行ったところ, 痙攣発作は認めなくなり, シンチグラフィでも脳血流の著明な改善が示された. 内シャントに関連した中枢神経症状の報告は散見されるが, 既報例と異なり, 本症例では過剰血流は認めなかった. 動静脈シャント造設に際しては, 吻合血管のみならず, 全身性の血管病変にも注意を向ける必要性が考えられた.

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© 2016 一般社団法人 日本透析医学会
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