2016 年 49 巻 7 号 p. 511-516
50歳, 女性, 透析歴21か月. C型肝硬変 (Child-Pugh B~C) があり, 肝性糸球体硬化症による末期腎不全で維持透析中であった. 右大量胸水, 左肺炎により呼吸不全となり, 当科へ入院となった. 酸素投与, 抗菌薬投薬, 右胸腔ドレーン留置・胸水排液を行い, 第14病日目に左肺炎は改善, 胸水排液も減少傾向となった. 第20病日目に胸腔ドレーン抜去したが, 3日後に右大量胸水を認め, 胸腔ドレーン再挿入となった. 胸水検査で漏出性胸水, 細菌培養陰性, 細胞診陰性, 心エコー検査で低左心機能や壁運動異常は認めず, 経過も併せて肝性胸水と診断した. 難治性胸水であり胸膜癒着術を行う方針とし, talc 4gによる癒着を2回, OK432 5KEによる癒着を1回施行後に胸膜癒着術は成功し, 以後の右胸水の貯留は認めなかった. 肝性胸水は, 透析患者においても, しばしば治療抵抗性であり, 胸膜癒着術は試みてもよい治療法のひとつと考える.