日本透析医学会雑誌
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症例報告
遷延性肝囊胞感染を有する常染色体優性多発囊胞腎 (ADPKD) に対する生体腎移植の1例
三宅 克典徳本 直彦小林 修三
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2016 年 49 巻 9 号 p. 611-615

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抄録

常染色体優性多発囊胞腎 (ADPKD) 患者の囊胞感染は治療に難渋することが多い. 今回われわれは, 遷延する感染性肝囊胞に対して肝囊胞開窓術にて感染を鎮静化後に生体腎移植を行った症例を報告する. 58歳女性. 2012年6月に肝囊胞破裂による腹腔内出血で救急受診. その後囊胞内に感染を伴い経皮経肝穿刺ドレナージを行って軽快退院したが, 約1年の間CRP 2.0~4.0mg/dLを推移していた. 特記すべき症状はなかったが生体腎移植を希望したため, 2013年8月に肝囊胞開窓術を施行した. 囊胞壁は壊死し, 囊胞内から黄白色に混濁した排液が多量に流出したため洗浄とデブリドマンを施行した. 囊胞液の培養結果は陰性であった. 術後経過は良好で, CRP 0.5mg/dL以下と陰転化したことを確認して2014年5月に夫をドナーとしてABO血液型不一致生体腎移植を施行した. 移植後2年を経過して感染症や拒絶反応なく生存生着している.

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